LC-8620活用研究 中級編


●HDDを圧縮

 LC-8620はパームトップ機としては大容量の 40MB-HDDを内蔵しています。それでももっと容量が欲しくなるのも人情。しかし、普通のノートパソコンと違って HDDが 1.3inchなので交換ができません。そこで、ソフトウェアで HDDを圧縮してつかうことで実質容量を倍にすることができます。DOSベースで使うと 80MB相当の HDDはけっこう使い出があります。

 いくつか市販のディスク圧縮ソフトがありますが、わたしが使っているのが「JAM」という名のディスク圧縮ソフトです。なんとウクライナ製のもので、仕事で使う場合は $49のレジストが必要です。

 JAMは、既存のディスク内にファイルを作り、それを圧縮ディスクとして使います。特にドライブレターの交換は行わず、新しいディスクができたかのように動作します。その仕様がかえってわかりやすいものになっていると思います。

 Niftyserveの FSNOTE LIB2にて入手できます。インターネットでの入手は不明です。


●キーボードにグリースを

 LC-8620はキーピッチが 15mmと狭いわりに適度なキークリックがあり、[Ctrl]キーが[A]キーのとなりにあるなど、わたしにとっては使い易いキーボードです。ですが、購入当時、[Shift]や[Tab]などの普通のキーより大きいキーに引っ掛かりがありました。そこで、キートップをはずし、擦れる部分にグリースを塗りました。これで引っ掛かりもなくなり快適です。

 ここで注意しなければならないのは、グリースならなんでもよいわけではないということです。機械用のものにはプラスチックを侵す性質のあるものも存在するからです。模型屋さんでラジコンのプラスチックギアに使うものが安心です。

 また、無理にキートップを外して足を折ってしまわないように気をつけましょう。わたしは[Ctrl]キーの足を半分折りかけてしまいました。本に戻す際に、正しい位置にセットしないまま上から押し付けた為です。幸い、曲がった程度で済んだので接着剤で補強して事無きを得ました。いうまでもありませんが、接着剤を使う場合は必ず完全に固着してから本体にセットするようにしましょう。


●コネクターの下をカット

 ある日のこと、会社でなにげなく LC-8620にケーブルをつなごうとしました。ところが…コネクターが入らない! 標準の D-SUB9Pなんですが。ねじが締まらないというのは ISOと inchねじの差を知っていますので、無理に締めることはしませんが、それ以前にコネクターが入らないのです。

 これは、LC-8620のコネクターの下の部分と下ケースの間が狭いことが原因です。下ケースがコネクターの先まで出っ張っているので、コネクターによってはぶつかってしまうのです。

カットした部分の写真 コネクターを入れてみた図
 そこで、わたしはあっさりと下ケースをカットしてしまうことにしました。これにより、シリアルコネクターはどんなものでもきちんと入るようになりました。パラレルコネクターは、カットすると蓋が締まらなくなるので諦めました。使用頻度も少ないので妥協。

コネクターの比較
 上の写真の黒いコネクターはカットをせずに入るものです。「モールド型」と呼ばれるもので、コネクターの勘合部分にはねじ以外の出っ張りがありません。一方、白いコネクターは勘合部分の上下にシェルが少しはみだしています。普通のPCなら問題ないのですが、LC-8620ではここがぶつかってしまいます。


●インターネットする その1 PPP

 謎パ〜でインターネットをします。もちろん、NN(NC)や IEを使っての WWWなんて望むべくもありませんが、インターネットの基本であるメールのやり取りは支障無く行えます。 WWWも最近は DOS用のテキストブラウザが発表されていますので、文字情報を引き出す用途には問題なく使えます。

 まずはモバイルPCでインターネットの通信の基本となる PPPのセッティングを行います。以前はこの用途には ether-PPPが有名でよく紹介されていましたが、それに代わって dospppというドライバーが出てきています。こちらの方が安定しているようです。わたしも ether-PPPから dospppに変更しましたが、良好です。

 下の URLへ行ってから、

dosppp05.zip

を選んで下さい。

→dospppダウンロードページへ
 さらに以下のファイルを作成します。ファイルの名前をクリックするとそのファイルだけが表示されますので、それを「名前をつけて保存」して下さい。

●PPPDRC.CFG
com3 38400 pktvec 0x62 irq 7 modem crtscts asyncmap 0 connect "chat -v -r pppdconn.lst -f chatscr.txt" user ******** passwd ********
 もちろん、最後の userと passwdは御自分のログインIDとパスワードに書き換えて下さい。それから、最後の「passwd 〜」の部分には改行コードを入れてはいけません

 ここではカードモデムを使うことを前提にしていますから、com3, irq 7 になっています。シリアルポートを使う場合は com1, irq 4、内蔵モデムを使う場合は com2, irq 3 にして下さい。

●CHATSCR.TXT
ABORT ERROR ABORT BUSY ABORT 'NO DIALTONE' ABORT 'NO CARRIER' ABORT RING REPORT word: TIMEOUT 10 '' ATZ OK ATDT0258-81-1207 TIMEOUT 45 CONNECT \c
 これは SANNET長岡の設定ですが、ごく標準的な設定ですのでほとんどのプロバイダで使えるのではないかと思います。もちろん、電話番号は書き換えて下さい。

 最近のモデムはたいていデフォルトの設定で済むと思いますが、変更しなければならない場合は ATZ の部分を書き換えて下さい。

 PPPDRC.CFGと同様、最後の行には改行コードを入れてはいけません

●MYISP.CFG
hostname = LC-8620 nameserver = 134.180.49.3 netmask = 0.0.0.0 gateway = 00.00.00.00 domainslist="sannet.ne.jp" SOCKDELAY=60
 やはり SANNETの設定です。SANNET以外の方は nameserverと domainslistを書き換えて使用して下さい。my_ip=…の記述は以下の PPP.BATの中で設定したうえで WATTCP.CFGを作成します。

●PPP.BAT
@echo off set ERR= MCARD ON if errorlevel 1 goto ERROR echo ただいま SANNET長岡 に接続中 if exist ip-up.bat del ip-up.bat >NUL epppd COM3 >NUL if not exist ip-up.bat goto ERROR call ip-up.bat copy myisp.cfg WATTCP.CFG >NUL echo my_ip=%MYIP% >>wattcp.cfg goto EXIT :ERROR set ERR=1 :EXIT if exist ip-up.bat del ip-up.bat >NUL
 このバッチファイルはカードモデムを使う場合のものです。シリアルポートで普通のモデムを使う場合や内蔵モデムを使う場合は MCARD ON は不要です。また、epppd COM3 をそれぞれ COM1、COM2に書き換えて下さい。もちろん、echo のメッセージも書き換えた方がいい人がほとんどでしょう。

 このバッチフィルでエラーが起きた場合は環境変数 ERRがセットされます。別のバッチファイルからこのバッチファイルを callする場合はこれを調べてエラー終了するとよいでしょう。

●OFF.BAT
@echo off termin 0x62 echo . MCARD OFF
 このバッチファイルはメールや WWWが終わって回線を切るときに使います。カードモデムを使わない場合は最後の MCARD OFF は不要です。



 以上の設定が正常であれば、PPP接続の開始は PPP.BATで、終了は OFF.BATで行えるはずです。

 なお、この設定は鈴電さんのホームページを参考にしてわたしが自分用にアレンジしたものです。


●インターネットする その2 メール

 インターネットでメールのやり取りをします。DOSでのメールソフトは定番の D-MAILを使います。
→DMAIL Ver.2.3 ダウンロードページへ
 メール用のディレクトリを作ってそこでダウンロードしたファイルを解凍します。それから、MKSUB.EXEを実行すると必要なディレクトリができます。その後、DMAIL_P.EXEを DMAIL.EXEにリネームして使います。

 ディレクトリ RC に CONFIG.RCというファイルがありますので、それを書き換えます。各人の環境に合わせて変更して下さい。

 SANNETに特有な部分を記述しておきます。

# 以下の4項目は必須 ;ユーザー名 User=***** ;POPホスト名(この項目は最長60文字まで) HostName=pop.sannet.ne.jp ;POPホストのIPアドレス ;DNS使用時は [0.0.0.0] HostIp=134.180.49.3 ;ホストの漢字コード(jis, sjis, euc) HostKanji=jis ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; # 以下の2項目はPOPとSMTPサーバーが異なる場合に必須 ;SMTPホスト名(POPホスト名と異なる場合:最長60文字まで){省略時は設定無し} SmtpHostName=mx.sannet.ne.jp ;SMTPホストのIPアドレス(POPホストのIPと異なる場合){省略時は設定無し} ;DNS使用時は [0.0.0.0] SmtpHostIp=
 もちろん、最初のユーザー名は自分のものに変更して下さい。その他の部分は必要に応じて書き換えますが、よくわからないところはそのままにしておきます。

●MAIL.BAT
@echo off set oldpath=%PATH% path %PATH%;G:\MAIL\BIN set DMAIL=G:\MAIL set wattcp.cfg=G:\MAIL\PACKET if "%1"=="off" goto OFFLINE if "%1"=="OFF" goto OFFLINE pushd G:\PPP call PPP popd if "%ERR%"=="1" goto ERROR copy G:\PPP\wattcp.cfg %wattcp.cfg% >NUL dmail.exe -b0 pushd G:\PPP call OFF.BAT popd goto EXIT :OFFLINE dmail.exe -n goto EXIT :ERROR set ERR= :EXIT path %OLDPATH% set oldpath=
 最後にメールを起動するバッチファイルです。普通に MAIL と実行すると PPPを起動してメールを読み込み、終了します。 MAIL OFF とオプションスイッチをつけるとオフラインでメールボックスのメールを読み書きできます。

 ドライブやディレクトリなどは御自分の環境に合わせて書き換えて下さい。わたしは PPPとメールのディレクトリを分けています。後で BOBCAT-Jなどの WWWソフトでも PPPを流用する為です。その為、pushdというコマンドを使っていますが、これは現在のディレクトリを保存した後でディレクトリ移動をするものです。popdは pushdで保存したディレクトリに戻ります。

→PUSHD,POPDのダウンロードページへ

●携帯電話・PHSの利用

 LC-8620で携帯電話やPHSを使ってのデータ通信はさほど難しくありません。要領としては普通のモデムカードでの通信と大差ありません。

●携帯電話+データカード

 モデムカードを使う要領で代わりに携帯電話用データカードを使えばそれでOKです。ただし、電話番号は市外局番から指定しておかなければなりません。

 よく、携帯電話の通信速度が 9600bpsだから通信ソフトのボーレートを 9600bpsに設定する人がいます。間違いではありませんが、もったいないです。これは、データを圧縮しながら通信する機能をデータカード(モデム)が持っているので、実質 9600bps以上の通信速度が得られるからです。また、データフロー制御がONになっているなら、パソコン−モデム間の通信速度が速くても通常は問題ありません。

 従って、通信ソフトのボーレートは 9600bps以上に設定します。38400bpsでも問題ないと思います。

●PHS+みなし音声

 PHSに付属のイヤホンマイク端子を使って通信する方法です。ごく安価なPHSではイヤホンマイク端子は無い場合もあります。

セルラーケーブル
 PHSの他に、「セルラーケーブル」と呼ばれるケーブルが必要です。これは、片方が電話で使われているモジュラープラグ、反対側がΦ2.5mmのステレオプラグになっています。この写真の製品はステレオプラグの中に電子回路が入っています。

 PHSの機種によっては設定が必要な場合があります。これはお持ちのPHSのマニュアルを見て下さい。わたしの使っている Victor TN-PZ5では「モデム セッテイ ON」にするとモデムからトーン発信することで電話をかけることができるようになります。

 モデムの設定は以下のようにしなければなりません。

モデムの機種によってはコマンドに違いがある場合もありますので、やはりマニュアルを確認して下さい。更に、PHSがトーン発信を受け付けず、モデムから直接電話をかけられない場合は、通信ソフトでの電話番号は指定せずに、PHSのボタンを押して発信する必要があります。

 などなど、みなし音声による通信は同じモデムを使っていても通常の場合と設定を変えなければいけません。

 また、モデムによってはセルラーケーブルでの通信が不可能なものもあります。電話回線には通常「局給電」といって約48Vの電圧がかかっています。この電圧を調べて電話回線につながっているかどうか調べるタイプのモデムではセルラーケーブルでの通信ができません。わたしの持っている XJ2144-81と LC-8620内蔵モデムでは問題なく通信できます。

●PHS(DDI-P)+データ通信カード

 カードを購入する必要があるものの、いちばんのお薦めです。しかし、LC-8620ではなぜかセイコーインスツルメンツの MC-6500が使えませんでした。MC-6500(及び、MC-6530)は、普通のノートパソコンはおろか HP100/200LX、モバイルギア、TiPOなど対応機種が多く、消費電力も少ないのでお薦めしたいところではありますが、肝心の LC-8620ではどうしても使うことができませんでした。(MC-6530は LC-8620で動くかどうかは未確認です。)

 その為、MC-6500は会社のK氏に売却し、Panasonicの KX-PH402を購入しました。こちらは問題なく使えました。この KX-PH402は、仕様では Windows95対応パソコン、並びに Machintoshシリーズ用となっていて、DOSでは使えないともとれるように書いてありますが、全く問題なく使えます。ごく普通のモデムカードと同じ扱いで動作します。SIIの MC-6530よりは消費電力が少し大きいらしい(未確認。)ですが。

 さて、このカードの場合、特に設定は必要ありません。そのままでαDATA通信が可能です。αDATAは DDI-Pだけのサービスですが、相手側のモデムが通常のアナログモデムであれば安定した 14400bpsの通信ができます。

 KX-PH402の場合、電話番号の末尾に「##2」を追加して発信すると無線インターネットというモードで通信します。これは、相手側が ISDNのターミナルアダプタを使っていれば 32Kbpsで高速通信ができるモードです。よく、PHSで 32Kbpsというと判で押したように PIAFSが必要というようなことを言われますが、無線インターネットでもそれは可能です。むしろ、PIAFSは、PIAFS専用のターミナルアダプターが必要なのに対し、無線インターネットは相手が普通の ISDNターミナルアダプターでよいのでずっと接続範囲が広いのです。この利点は雑誌などでもっととりあげられてもいいと思います。


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