まず、最初に注意しなければならないのは、LC-8620はメモリーアクセスタイミングの設計が甘いらしく、14MHzだとうまく起動しない個体があるらしいということです。特に、夏場等で高温になると調子が悪くなるものが多いようです。この症状を根本的に改善するにはここの「上級編」でやっている ROM交換をするしかありませんが、ROMライターが必要だったりしますので次の方法で逃げることにしましょう。まず、拙作 LC86EX.SYSを C:CONFIG.SYSの先頭に入れてください。その際に、オプションスイッチ -D3 をつけてください。これが起動して以降はアクセスタイミングは補正され、14MHzでも安定に動作します。LC86EX.SYSは他にも 186命令を実行できるようにしたり、左[Ctrl]キーのバグの補正をするなどの機能がありますので、メモリーアクセスが正常でも入れておくことをお薦めします。
→LC86EX.SYS マニュアル
→LC86EX.SYS LZHアーカイブ起動して CONFIG.SYSを実行する前は極力 7MHzで動作するように気をつけます。14MHzで動作中にリセットするときは、[Fn]+[F6]でいちいち 7MHzにクロックを落としてからするようにします。やむを得ず 14MHzでリセットするときはメモリーカウント中であっても[Fn]+[F6]でクロックを落とすようにします。
なお、LC86EX.SYSが常駐しているときに、[Ctrl]+[Alt]+[Del]でリセットするときは自動的にクロックを落とします。
LC-8620は [Fn]+[Esc]で BIOSのセットアップ画面に入れます。ここで、少しでも電池の持ちをよくする為に以下の設定にしておきましょう。
シリアルポートとパラレルポートは通常は OFFにしておきます。通信等で使う時にマニュアルで ONにして、終わったら OFFに戻すとよいでしょう。 LC-8620は [Fn]+[F3]でシリアルポートが、[Fn]+[F4]でパラレルポートの電源が ON/OFFできます。Serial Port : Disable Parallel Port : Disable Beep when Low Battery : Disabled HD Spin Down timer : 04マニュアルではめんどくさいし、入れ忘れ・切り忘れも発生しますので、バッチファイルを使うのもよいでしょう。LC-8620は Dドライブ(ROMドライブ)に ABSETUP.EXEという設定プログラムが入っていますのでこれを使います。
ABSETUP S=ON …シリアルポートON ABSETUP P=ON …パラレルポートON ABSETUP S=OFF P=OFF …シリアル・パラレルポートOFFローバッテリーアラームを禁止しているのは、HDDの始動時など、ちょっと電圧が低下しただけで頻繁に警告が出てしまう為です。本当にバッテリーが切れたときはちゃんとサスペンドしますので禁止してしまいましょう。
なお、バッテリーがもうすぐなくなるというとき、HDDの始動時にハングアップしてしまうことがあります。どうやら電圧が下がりすぎて HDDのモーターが動かなくなったのに、BIOS側ではモーターの起動をずっと待つらしいのです。この場合は電源ボタンもききません。でも、あわてずに ACアダプターをつないで、[Fn]+[F6]を2回押しましょう。これで復帰すると思いますのでそのまま電源を切って(サスペンドして)電池を交換します。
日本人が実用的にPCを使う場合は日本語化が必須でしょう。幸い、LC-8620は IBM-XT互換で、内容的には HP100/200LXと似た構成をしていますのでそちらの日本語化方法が参考になります。ここではフリーソフトを中心にして日本語化を行います。用意するソフト:
- CGAディスプレイドライバ yadc.exe
- フォントドライバ fontman.exe
- $FONTX仕様のフォント。赤城フォントがお薦め。
- KKCFUNC.SYS ATOKを使う場合は不要。刀のときはあった方がよい。
- DOS/V用 WX2,WX3,刀,ATOK等のうちいずれか。刀がお薦め。
- 必要に応じて ANSI.SYSか、PANSI.SYS、PANSI.COM等。
- IBM DOS 5.02J/Vから ATTRIB.EXEや DOSKEY.COMなどを持ってきたほうがよい。
CONFIG.SYSの例:files=40 buffers=30 lastdrive=z dos=umb shell=d:command.com /p /e:2048 DEVICE=C:\SYS\LC86EX.SYS -D3 -C639e -U -K devicehigh=d:\pccemm.sys noclear=on size=960 devicehigh=d:\ramdrive.sys 640 512 20 /a devicehigh=d:\sdpdrv5.sys DEVICE=C:\JAM\JAM.SYS DEVICE=C:\JAM\JMOUNT.COM C:\PACKDRV rem device=d:\sstordrv.sys /maxmount=2 /noauto rem device=interlnk.exe /noscan /drives:6 /com1 /lpt:1 DEVICE=C:\DOS_C\FONTMAN.EXE -b8 -fC:\DOS_C\FONTMAN.INI -d DEVICE=C:\DOS_C\YADC.EXE -v70 -h11,12 -bd -6- DEVICE=C:\DOS_C\PANSI.SYS /K DEVICE=C:\DOS\KKCFUNC.SYS DEVICE=C:\KTN4\KTN4.SYS /F=C:\KTN4\KTN4.CFG DEVICE=C:\KTN4\KTN4C.SYS /F=C:\KTN4\KTN4.CFG
LC86EX.SYSは、先にも述べたように LC-8620の不具合修正ソフトです。ここでは RAMアクセスの補正、Capsワークエリアの指定、UMBの使用、FEP起動キーの変更のオプションスイッチを指定しています。JAM.SYSと JMOUNT.COMは JAM Software製のディスク圧縮ソフトです。仕事に使う場合は $49のレジストが必要です。わたしはこれで内蔵 HDDを実質 80MBとして使っています。動作も安定しています。Niftyserveの FSNOTE LIB2でダウンロードできます。186命令を使用しているらしいので、LC86EX.SYSが先に実行されていなければいけません。
ディスプレイドライバとフォントドライバは yadc.exeと fontman.exeを使います。それぞれに設定ファイルがありますので、そちらも変更してください。
FEPのお薦めは「刀」です。DOS/V用オーロラエースに付属しているものに、CGA用のパッチをあてる必要があります。また、Niftyserveのオンライン販売で「刀」のみを購入できます。
GO SOFTV → 3.オンラインソフトウェア販売コーナー 1<Softex> → アスキーサムシンググッドKKCFUNC.SYSは、「刀」の場合はたいていなくても動くのですが、たまに不具合を起こすソフトもあります。(拙作の CNONO.EXEもその一つ。) LC-8620は LC86EX.SYSによって UMBが使えるしコンベンショナルメモリーがはじめから 704KBありますので入れたほうがいいでしょう。
日本のソフトにはエスケープシーケンスを使うものが結構ありますので ANSIエスケープシーケンスドライバーを入れておいたほうがいいでしょう。ここでは PANSI.SYSを使っています。
AUTOEXEC.BATの例:@echo off prompt $l$p$g path D:\;C:\BIN;C:\SYS;C:\DOS_C;C:\DOS set VZDEF=C:\BIN\EDX set TZ=JST-9 RKYBD -t20 DOSKEY /INSERT absetup A=3 T=ON S=OFF P=OFF if exist E:\AKAGI11K.FNT goto EXIT :COPYFONT echo Now copying files... copy C:\DOS_C\AKAGI11K.FNT E:\ >NUL copy C:\DOS_C\MINZN16X.TLF E:\ >NUL attrib +r E:\AKAGI11K.FNT attrib +r E:\MINZN16X.TLF absetup T=OFF echo Please RESET! :EXIT
prompt や path、環境変数は各人の好みに合わせてください。LC-8620はなんと、キーリピート速度の変更ができません。ですが、大和田哲氏作の RKYBDを使うとキーバッファの拡大とオートリピートの変更ができます。本来は J-3100SS用なのですが LC-8620でも問題なく使用できます。
DOSKEYはあるとキー入力ヒストリーなどが使えて便利ですが、無くてもかまいません。もっと便利なフリーソフトもあるようですがわたしはこれで十分です。
ABSETUP.EXEでオートパワーOFF3分、Turbo ON、シリアル・パラレルポート電源 OFFに設定しています。
fontman.exeで使う漢字フォントは RAMDISKに置きます。しかし、fontman.exeの起動時にそこにフォントがある必要があります。もし、無いと漢字フォントが正常に表示されません。そこで、AUTOEXEC.BATでフォントファイルがあるかどうかチェックし、無ければコピーして再起動するように促します。
ATTRIB.EXEでフォントファイルを読み込み専用属性をつけて不慮の消去を防ぐようにします。ATTRIB.EXEや DOSKEY.COMは LC-8620には付属していないので IBM DOS 5.02J/Vなどを入手して入れておきましょう。わたしは COMMAND.COMもそちらのものを使っています。
MINZN16X.TLFは 16×16ドットの「電脳フォント明朝体」です。ソフトウェア自動販売機「武尊」で販売されていましたが、現在では販売していないらしいです。武尊そのものも姿を消しているようですし。
FONTMAN.INIの設定例:[fontx2] C:\DOS_C\AKAGI11A.FNT E:\AKAGI11K.FNT C:\DOS_C\MINHN16X.TLF E:\MINZN16X.TLF [font14] [elisa]
半角フォントはメインメモリー上に全て読み込まれますので RAMDISK上に置く必要はありません。
YADC.INIの設定例:[l25] ;8ドットフォント使用 25行表示 -v70 -h8 -6+ -jp -b+ -a [l12] ;16ドットフォント使用 12行表示 -v70 -h16,16 -6+ -jp -b+ -a [l16] ;11ドットフォント使用 16行表示 行間1ドット -v70 -h11,12 -6+ -jp -b+ -a [l18] ;11ドットフォント使用 18行表示 行間無し -v70 -h11 -6+ -jp -b+ -a [.DEFAULT] -v70 -h11,12 -6+ -jp -b+ -a
YADC.EXEは、8ドットフォントが無い場合は16ドットフォントを圧縮して作りますので特に8ドットフォントを用意する必要はありません。
LC-8620を購入したら合成皮革(だと思う。)のバッグが付属していました。これを使っていてもいいのですが、なんか集金袋みたいなので使わずに別なのを探しました。
これは秋葉原 アイ・ツー Mobile専科で見つけたバッグです。本当は Libretto用のケースなのですが、無理すれば LC-8620が入ります。使っているうちにゆるくなるだろうと踏んでの購入でした。たしかにそうだったのですが、本体しか入らず、ACアダプターやモデムカードなど別のバッグに入れなければならないのでいまいちでした。
現在、わたしが使っているバッグです。オーディオテクニカの ATC-437という、「モバイルギア/ザウルス用」のものです。ごらんのように本体だけでなくモデムカード、巻き取りケーブル、ACアダプター(詳細は後述。)、予備電池6本、PHSみなし音声ケーブルまですべて収納することができますのでこれひとつで外出先での通信ができます。他にもアルティザン&アーティストというメーカーからモバイルギア用のバッグが出ています。わたしは試していませんが、これもよさそうです。LC-8620はモバイルギアと同様のサイズなので他にも使えるものがあるかもしれません。
LC-8620に使えるバッテリーは単3型のニッケル水素蓄電池のみです。以前の型ではアルカリ電池も使えたようですが、LC-8620では ACアダプターをつなぐと必ず充電状態になるので使えません。購入時3本付属していますが、当然予備電池が必要になります。LC-8620は HDDを内蔵していることが災いして電池寿命が短いのでなおさらです。そこで、わたしは東芝の「Super HYDRIDE」を使っています。充電器はいろいろ試したのですが、結局東芝純正の「THC-34AH」を使っています。LC-8620は「3本」という半端な数の電池を使う為、一度に充電できる充電器はほとんどありません。
よく、「メモリー効果」について神経質になる方がいらっしゃるようですが、電池がなくなって自動的に停止するまでPCを使う場合は気にする必要はありません。問題なのは、大型のノートPCを使う際によくするような、ACアダプタをつなぎっぱなしでつかう場合だけです。パームトップPCは通常は電池のみで使うことがほとんどであれば容量の大半を使いきったうえで交換するのでメモリー効果は発生しません。(データの安全の為に、かなり容量を残してサスペンドする機種の場合は起こるかもしれませんが。)どうしても気になるという人は「時々」放電器で放電させるようにしましょう。
むしろ、メモリー効果より気を使ったほうがいいのは、電池のばらつきです。電池を購入したら3本毎に印をつけてグループを作ります。使うときや充電するときは必ずそのグループ単位で行うようにすると同じ使用条件、同じ充電状態になるのでばらつきがある程度防げます。
LC-8620は 2400/9600bps FAX-MODEMを内蔵しています。いざというときは 2400bpsでもメールのやり取りくらいは使えますが、最近ではやはり遅いと感じてしまいます。しかし、せっかく PCMCIA Type2スロットがあるにもかかわらず、PCカードサポートソフトが無い為にモデムカードはそのままでは使えません。そこで、モデムカードに特化したイネーブラ MCARD.EXE を作成しました。
→MCARD.EXE マニュアル
→LZH形式アーカイブ
→ZIP形式アーカイブ
今のところ動作が確認されているモデムカードは次のとおりです。
- Megaherts XJ2288(28800bps)
- Megaherts XJ2114-81(14400bps)
- SUNTAC MS144CF(14400bps)
- NTT DoCoMo MAH11データ/FAXカード2(携帯電話用 9600bps)
- Megaherts XJ214FM-81(2400bps)
- Panasonic PHSデータ通信カード KX-PH402(αDATA32)
一方、以下のカードは使うことができませんでした。
MC-6530(αDATA32カード)は確認していません。
- 京セラ DS-110
- セイコーインスツルメンツ αDATAカード MC-6500
モデムカードの次はケーブルです。今まではいわゆる「巻きとり君」がお薦めだったのですが、もっといいものが出ました。Victorから「HC-TC220」という、PCカードサイズの巻き取りケーブルが出ています。これは、巻き取り君と同じリール方式のケーブルにメス−メスの極性変換コネクターが内蔵されているものです。これ一つあればグレ電やホテルのモジュラージャックからの通信は大丈夫でしょう。わたしの場合は、さらに PHSとセルラーケーブルSuper(みなし音声用ケーブル)も持ち歩きますので、都市部なら通信に困らないでしょう。(その後、αDATA32カードを購入したため、みなし音声ケーブルは使わなくなった。)
LC-8620は Type2の PCMCIAスロットがありますが、メーカーが動作保証しているのは S-RAMカードと Sandisk社のフラッシュATAカードだけです。Sandisk社の OEM品を除き、他社の ATAカードは使えませんでした。モデムカードを始めとする I/Oカードもだめです。(モデムカードだけは拙作 MCARD.EXEで使えます。ただし、一部動作しないカードもあり。)しかし、わたしの調査では内蔵している SDPDRV5.SYSにパッチをあててメーカーチェックを外すと大丈夫らしいことがわかりました。この為のソフトが SDPPATCH.EXEです。これを使ってパッチあてした SDPDRV5A.SYSを使ったところ、ノーブランドで売っていたフラッシュATAカードが使えるようになりました。中身は日立製のようです。ただし、すべてのカードが使えるとは限りません(調べようが無い)ので、購入するときは気をつけてください。できるなら店先で試させてもらえるとよいのですが。
→SDPPATCH.EXE マニュアル
→SDPPATCH.EXE LZHアーカイブ