KTR-10 送信基板調整方法


必要な機器等

KTR-10は送信出力 100mW程度の QRPpとはいっても電波法に添った運用が求められます。比較的安価な測定装置でもある程度調整はできますが、何かあった場合は製作者・運用者の責任となります。ちゃんと製作すれば特別問題のある電波が出ることはないと思いますが、念の為。

調整に必要になる装置は以下のようになります。

まずはマイクの代わりのシグナルジェネレータを用意します。通常のコンデンサマイクは数十mV程度の小さな出力なのでそのレベルの綺麗なサイン波出力が出せるシグナルジェネレータが必要となります。

そのようなシグナルジェネレータが用意できない場合は PCのオーディオ出力で 1Vp-p程度のサイン波を出力し、抵抗分圧で 40mVp-p程度にレベルを落とすのがよろしいでしょう。なお、マイクゲインについては最終的には実際のマイクを使って電波を出してローカル局に聞いてもらって調整することになると思います。

こちらはわたしが使っている回路です。シグナルジェネレータから 1Vp-pのサイン波を出して使います。

50MHzの波形を調べるのでオシロスコープは通常は 200MHz以上のものを使います。50〜100MHzでも使えないことはないですが、電圧の指示値はあてにならなくなるので目安程度に。それでも波形が見られるのは大きな利点です。

オーディオ帯域のオシロスコープしかない場合はダミーロードにダイオードの検波回路をつけて検波出力を見てください。検波ダイオードはゲルマニウムでもいいですが、ここでは 1SS106を使っています。

検波波形を見ているところです。とりあえずどんな変調波形が出ているかはわかります。サイン波の下の部分が欠けていますが、これは検波ダイオードの Vfによるものです。

送信基板調整

基板の調整箇所は

となります。

初期設定では PTT動作(送信ON)は無効になっています。液晶メニュー設定の「Set PTT Volt」で PTT動作時の A/D電圧を記憶させてください。

→KTR-10 パネル操作説明

調整が済むとキャリアレベルとマイクゲインはだいたいこの画像のような位置になると思います。

アンテナコネクタには 0.5W以上入力可能な終端電力計か 50Ωのダミーロードをつなぎます。マイク入力にはマイクレベルと同等のレベルのサイン波が入力できるようにしたシグナルジェネレータ(相当)をつなぎます。

まず、マイクゲインは左下に回しきった状態にします。キャリアレベルは左下に回しきった状態から少しだけ回した状態(9時前)にします。

この状態で PTT ON(送信)します。すると数〜数十mW程度の出力が出るはずです。出なかったり異常発振する場合は電源を落として配線やハンダづけを確認します。

送信中にキャリアレベルの VR1を少し回すとそれにつれて出力が変化するのを確認します。

キャリアレベルを9時の位置に合わせ、トリマコンデンサ TC1を回して出力レベルが最大になるようにします。この状態で 100mW前後の出力が出ていると思います。

シグナルジェネレータから 1kHzのサイン波を入力し、マイクゲインを上げていきます。サイン波の一番下の部分で出力がほぼゼロになるような位置に合わせます。この状態ではサイン波の頭が潰れた状態になっていると思います。

シグナルジェネレータの出力にもよりますが、マイクゲイン VR2の位置は 12時前後のあたりになっていると思います。

トリマコンデンサ TC1を回して綺麗なサイン波になるようにします。


シグナルジェネレータの出力を切った時に 100mW前後が出力されるようにキャリアレベルを調整します。

その後、またシグナルジェネレータを ONにして波形を確認、トリマコンデンサと VR2, VR1を調整します。これを何度か繰り返します。

この画像の状態ではサイン波の頭が潰れすぎです。

サイン波のピークは少々であれば潰れていても問題ありません。こんな感じでも OK。

最終的にシグナルジェネレータ OFFで 100mW前後、ONで変調度 100%のなるべく綺麗なサイン波になるようにします。

実際のマイクを使って音声を入れて確認します。普通の音量で波形がいっぱいに振れていれば OK。

できれば他の受信機で歪が無いか、変調の深さが適当か確認します。

スペクトラムアナライザででスプリアスを確認します。スペクトラムアナライザをつなぐ際にはアッテネータをお忘れなく。

40dBのアッテネータは自作できます。π型で 51Ω - 2.5kΩ - 51Ω。2.5kΩは 10kΩ4本をパラるのがいいでしょう。

変調状態でスプリアスレベルは -13dBm以下であれば OK。画像では 20dB以上のマージンがあるので、精度の劣る自作アッテネータ+tinySAの測定であっても問題ないでしょう。

帯域外輻射の確認。これは tinySAでは測定不可能です。画像は RTL-SDR V3rtl-power-fftwで測定して dBcに換算してプロットしたものです。

測定は無変調状態で行います。AMの場合は 6kHz x 2.5 = 15kHzで、キャリアから上下 15kHzの外側が -10dBm以下の必要があります。画像は dBc単位で、出力が約20dBmなので -30dBc以下であれば OK。

1W以下の出力なので基準が甘いです。50MHzの場合、出力が 1Wを超えるととたんに厳しくなります。1W以上の送信機を自作する場合はやはりちゃんとしたスペクトラムアナライザが必要でしょう。

RTL-SDR V3では1回の測定で 2MHzの幅を観測します。上下 1MHzの範囲を表示させたところ。短いヒゲがいくつか見られるようですが、RTL-SDR V3自体のスプリアスの可能性もあります。まあ、レベルが低いので無視していいでしょう。

1kHzで変調した時のキャリア付近のスペクトラム。KTR-10の送信回路はベース変調でありながら NFBをかけているので歪が少ないです。少ないとはいえ、全く無いわけでもないので高調波があります。

1kHzで変調した時の±1MHzの範囲のスペクトラム。問題ないですね。


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