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2025.8.19
中波のAM放送が先細り気味です。うちの近所の BSN(新潟放送)の長岡送信所も昨年止まってしまいました。半年だけ止める「実験」ということだったのですが、結局止まったままです。民放局は遅かれ早かれ FM放送化は避けられないようです。
そんな昨今ですが、せっかく周波数が空いたのであればその隙間を利用するべく、トランスミッタを作ってみました。微弱電波仕様なので免許なしで使えますが、そのかわり 1〜2m程度しか届きません。しかし、50MHz自作トランシーバーで培った NFB付きベース変調を用いて高音質の送信機になっています。バーアンテナで送信しており、50cm以内の距離だと結構強力で AMにもかかわらずほぼノイズなしで受信できます。
基板裏面。アナログ高周波回路っぽくないですね。PLL IC(Si5351A)を MCUで制御しています。一応中波帯をフルカバーしますが、整数倍の高調波スプリアスが出ますので 1300kHz以上の高い周波数での使用をお薦めします。スプリアスは出ますが元々微弱信号なので特に問題ありません。基本波よりもスプリアスは小さくなっていますし。
ボタンを押すことで簡単に周波数を変更でき、変えた周波数は電源を切っても記憶していて次回はその周波数から起動します。また、周波数のステップやバックライトの点灯時間、周波数の微調整などの設定変更を液晶とボタン操作でできるようにしてあります。
Li-Po電池で動作します。USB Type-Cコネクタで充電しますが、今後製作する基板では省略する可能性もあります。
回路図はこちら。→TRS-11回路図(PDF)
高周波回路は上の図の部分のみです。PLL IC(Si5351A)の出力を簡単な LPFを通してからトランジスタのベースに入れています。PLL ICの2本の出力は逆位相になるように設定しているので2個のトランジスタはプッシュプル動作をします。
トランジスタの DCバイアスは IC2(オペアンプ)で与えています。この時、トランジスタのエミッタにつながった R11の抵抗による電圧を NFBとして使っています。オーディオ信号で DCバイアスを振ることでベース変調を行いますが、NFBがかかるので歪みは相殺されます。
回路図2ページ目は入力信号の L-Rミキサーとバッファ兼フィルターです。LPFで 10kHz以上の信号はカットしていますが、同時にプリエンファシスも入れてあり、高音域を補償しています。
回路図3ページ目は電源と MCU、液晶やボタンなどの制御まわりです。
名称 | AMトランスミッタ TRS-11 |
送信 | 周波数:522〜1620kHz AM(A3E) 微弱 変調方式:ベース変調(NFB付き) |
オーディオ入力信号 | LINE出力 もしくは ヘッドフォン出力 |
制御 | MCU : STM32G030K8T6 PLL : Si5351A |
電源 | 3.7V Li-Po電池1個 or 外部入力 5V 0.1A |
外形寸法 | 基板寸法 W80mm x D50mm |
POWER/MENU ボタンを押すと電源が入ります。起動するとこのような液晶表示になります。再度、POWER/MENUボタンを押すと電源が切れます。
液晶の上の行は周波数です。UP か DOWN のボタンを押すことで変更できます。
下の行、左は電源電圧です。3.3Vを切ると電源が切れます。右側は送信の ON/OFF表示です。ENTERボタンで ON/OFFを切り替えられます。
液晶のバックライトはボタンを押す度に点灯し、30秒後に消えます。
基本動作はこれだけです。Audio INに音楽プレーヤー等をつないで送信 ONにすると電波が出てラジオで聴くことができます。音が小さかったり大きすぎて歪んだりする場合は VR2(Audio Gain)を調整してください。VR1(Carrier Level)の方はあまり動かさないでください。
電源が入った状態で POWER/MENU ボタンを2秒以上長押しすると設定メニューモードになります。
この状態で UP ボタンを押すと下の行の表示が FreqStep → BKLTtime → PWRON TX → FreqOfst と変化します。DOWNボタンで逆方向に表示が変わります。
「FreqStep」は通常モードで UP/DOWNボタンを押した時の周波数の変化量を変更できます。下の行が「FreqStep」の状態で ENTERボタンを押します。
するとこのような表示になります。
ここで UPボタンを押すと下の行が 10kHz → 100kHz と変わっていきます。
DOWNボタンを押すと 100kHz → 10kHz → 9kHz → 5kHz → 1kHz と変わっていきます。
使いたい周波数ステップが表示された状態で ENTERボタンを押すとその値に決まります。また、POWER/MENUボタンをした場合は設定変更せずに前の画面に戻ります。
設定メニューモードに入ってから 30秒以上ボタン操作を行わないと通常モードに戻ります。
「BKLTtime」はバックライトの点灯時間を設定します。0〜60秒で設定できます。0秒にした場合は自動消灯せず、点灯したままになります。
「FreqStep」の時と同様に UP/DOWNで値を変更し、ENTERで決定してください。ENTERを押さずに POER/MENUボタンを押すと変更せずに戻ります。
「PWRON TX」は電源を入れたらすぐに送信するかどうかを選びます。
「ON」だと電源が入ったらすぐに送信します。「OFF」の場合は電源を入れてもそのままでは送信せず、ENTERボタンを押したら送信するようになります。
「FreqOfst」は送信周波数の微調整を行います。正確な周波数カウンタなどがある場合は調整してもいいでしょう。
10Hz単位で微調整できますが、特にしなくても問題ないと思います。