LC-8620に付属している ACアダプターはスイッチングレギュレータ方式のもので、外形こそ普通のトランス型と変わりありませんが軽量になっています。しかし、持ち歩くには軽いばかりでなく小型であることも必要となります。特に電池寿命の短い LC-8620では泊りがけの出張などには予備電池だけでは心許ないものです。そこで小型軽量の ACアダプターを探すことにします。条件は
です。この条件に合うものが秋葉原・ラジオデパート3Fにて売っていました。ただし、5V出力です。幸いなことに中を開けると半固定ボリュームがあり、それを回すと 6V出力にすることができました。コネクターはΦ2.1の小型 ACアダプター用もので、やはり秋葉原・千石電商で購入して取り替えました。
- 小型軽量であること。
- 6V出力。電流は、付属のものは 1500mAだが、1A程度で十分なはず。
- コネクターは交換すればいいのでどうでもよい。
軽量・薄型でコンセントの刃が折り畳めるので携帯に適しています。入手できるならこれが一番のお薦めです。ただし、改造に際して感電したりしないよう、十分に注意してください。
LC-8620の裏面の蓋を開けると ROMが顔を出します。この ROMは BIOS、MS-DOS、ROM-Diskを含んでいます。従って、これを交換すれば BIOSの不具合を修正したり、ROM-Disk(Dドライブ)の内容を変更することができます。特に有効なのが、初級編でも触れたメモリーアクセスの不具合の修正です。ハードリセット(電源ボタンの右側の穴のスイッチを尖ったもので押す)した場合は、どうしても最初は ROMに書き込んであるタイミングで CPUが動作しますので、LC86EX.SYSが起動するまでは不安定な状態で動作することになります。あらかじめ 7MHzでリセットした場合はいいのですが、なにかの原因で 14MHzでリセットせざるを得ない場合は(こちらが普通と思われる)リセット後、BIOSはワークエリアの「Turbo ON」の設定を読み出してすぐに 14MHzで動き出してしまいます。その為、高温環境下などではリセットしても復帰できない場合もあります。
BIOSのバージョン等があるので一概には言えないと思いますが、以下の部分を書き換えるとメモリーアクセスタイミングが変更されて安定動作します。
7203A:05 → 0Fまた、次の部分を書き換えると最初から 186命令が実行できるようになります。
72020:08 → 18これらは LC-8620の CPU、F8680Aに特有の内部レジスター CREGの設定データです。F8680/F8680Aについては市販の文献で参考になるものがあまり無いのですが、唯一、「Massif ハイパーガイド」牟田拓・福田雅史共著 ソフトバンク刊 の Appendix Cに CREGの設定を含めて詳しく載っています。興味のある方は参考にするとよいでしょう。なお、CREGの設定の読み出し/変更には INT 1Fhが使えます。ROMの最初の部分は ROM-Diskの内容です。MS-DOSのディスクイメージそのままの内容で格納されていますので、修正も容易です。
LC-8620の HDDアクセスランプと Low Card Batteryランプはなぜか緑色です。これがわたしは気にくわなかったので交換してしまいました。
ケースを開けると 3mmの LEDが5つ並んでいます。足を長いまま使っているので、それをニッパーでカットして別の LEDをはんだ付けします。わたしは右の2つを赤のものにとりかえました。ケースは3本のねじで止まっています。裏面左上のゴム足付近のゴムの目隠しの下にひとつ、右上のゴム足を外した下にひとつ、PCカードイジェクトボタンを押したときに顔を出す部分にひとつ。これらを外したら、背面の上下ケースの間の小さなスリット2ヶ所を細いマイナスドライバーなどで押してやります。ここがフックになっています。それからは使い古しのテレホンカードなどを上下ケースの間に差し込んでフックを外していきます。左側のコネクターの蓋は開けておきます。
フックが外れると上下ケースが外れますが、間にフラットケーブルが3本あります。これらを傷つけると修復が困難になりますので傷めないよう、最新の注意を払いましょう。
右側の2本のフラットケーブルは基板側のコネクターの両端をピンセットで手前に引っ張ってやるとロックが解除され、ケーブルが抜けます。ですが、左側の1本はロック機構が無いのでそのまま引っ張ります。勢い余ってケーブルを傷つけないようにしましょう。
これで上下が別れます。LEDの交換なら基板を外さなくてもこのままで行えます。
組み立ては分解のときの手順を逆に行うのですが、フラットケーブルの扱いに注意してください。強く折り曲げると内部の導体部分が割れて、目には見えなくても断線する場合があります。また、接続部分の導体がはげてしまうこともあります。あせらずじっくりとやりましょう。
LC-8620を日本語化する際、漢字フォントはメモリー上に置かなければ実用になりません。ROMを交換したとしても、ROM-Diskは 300KB程度しかないので漢字フォントを置くには不足するのでやはり RAMに置くことになります。赤城フォントは 150KB程度ですが、16ドットフォントは 250KBもあるので合わせると 400KB以上になり、RAM-Diakを圧迫します。また、使い込んでいくと FEPの辞書も RAMに置きたくなります。普通のPCなら HDDに置けば済むのですが、LC-8620は HDDを回すとたちまちバッテリーが無くなるのです。
そこで、RAMを増設してフォントと辞書をそちらに移すことにしました。幸い、F8680Aの CS信号が1本余っていますのでそれを使えば亀の子方式で RAMを増設できます。
RAMは次のいずれかを用意します。1MB増設の場合は2個、2MB増設の場合は4個必要です。また、2MB増設の場合はアドレスデコーダとして 74AC139も必要です。
RAMは 22ピン(CS信号)を残して基板上の RAMに亀の子増設します。
- 日立 HM658512ALFP-8
- 東芝 TC518512AF-80
- 沖 MSM548512L-80GS-K
F8680Aの 75ピンが CS22信号です。これを増設した RAMの 22ピンに接続します。
2MB増設する場合は、CS22信号は 74AC139の Gに、F8680Aの 58ピン(ADR20)を Aに、GNDを Bにつなぎます。Y0と Y1をそれぞれ RAMのバンク毎に CSにつなぎます。ハードウェアはこれでいいのですが、システムは増設した RAMを認識しません。そこで、増設した RAMを RAM-Diskとして使うドライバーを作りました。これが ERAMDISK.EXEです。これにより、増設した RAMを RAM-Diskとして使えるようになり、めでたく漢字フォントと FEPの辞書を置くことができるようになりました。
→ERAMDISK.EXE マニュアル
→ERAMDISK.EXE LZHアーカイブ