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KTR-10 / KTR-12 受信回路をダブルスーパー化


2024.9.1

概要

KTR-10 / KTR-12の受信回路は自分用に開発した DTR-20の簡易版的な回路になっています。DTR-20は RF AMP付きのダブルスーパーヘテロダインなのに対し、KTR-10はシングルスーパーのみにしてあります。これで回路が大幅に単純化されました。実際に作って試してみるとこれでも結構感度がいいのでこの構成でキット化しました。

とは言え、50MHzで IF 455kHzのシングルスーパーだとイメージ周波数との差がわずか 910kHz差しかありません。仮に 50.910MHzに周波数を合わせたとすると 50.000MHzの信号も同時に聞こえることになります。同じバンド内なので全くイメージ除去ができない状態です。

それでも空いている 50MHzですし、AMは 50.6MHz付近を使うのが普通なので実用上はあまり問題にならないと思います。

しかし、ノイズが多い環境ではまた話が違うかもしれません。ハムフェア2023に KTR-10を持っていって思ったのですが、あの環境は非常にノイズが多くて大変聞き取りにくいのです。イメージ除去が全くできないとすると、本来の周波数でのノイズの他にイメージ周波数のノイズも同時に受信することになります。

というわけで当初から考えていた KTR-10の「ダブルスーパー化」をやってみました。前フリ長くてすいません。

製作したミキサー基板。たったこれだけ。事実上、ミキサーチップの NJM2288F1と 10.7MHzのクリスタルフィルタ(±7.5kHz幅)があるだけです。感度に関してはシングルスーパーでも十分な感度があるので RF AMPは省きました。拡張用のコネクタには RF AGC用の電圧も出ているのですが、使っていません。

→KTR-10 ミキサー基板回路図(PDF)

ダブルスーパー改造した受信基板。当初からダブルスーパー化を考えていたので改造と言っても C10を取り去って点線内の部品をつけるだけです。PLL基板からの出力はこちらにはつながず、ミキサー基板の CN2につなぎます。

画像では C4も取り去っていますが、CN1を使わないのでそのままでもかまいません。うちの場合、最初、クリスタルが発振しなかったのでちょっといじった次第です。結局クリスタルを交換したらあっさり動きました。aitendoのクリスタルは怪しい? 負荷容量も不明だし。NJM2552Vの 1-2ピンでクリスタル発振させる回路は他に見当たらないというのもありますが。

ダブルスーパー化を念頭に置くのであれば、セラミックフィルタとクリスタルの周波数を考慮しておく必要があります。450kHzのセラミックフィルタを使っているのであればクリスタルは 10.25MHzが必要になります。

受信基板とミキサー基板。ここでミキサー基板のパターンミスが発覚。ミキサー基板の CN1コネクタの位置が、端面から 1.27mmにするはずが 1.72mmになっていました。orz

※現在配布されている基板では修正済みです。

基板間の接続コネクタ。本来は画像左の2列ピンソケットを使うつもりがコネクタ間が開いてしまったので1列ピンソケットを2個使うということに。

※最近の基板では修正されているので2列のピンソケットで接続できます。

そんなこんなで組み込んだ状態。ケースに入らなくなったので基板の位置をずらしています。ケースの穴をドリルで開け直し。

ソフトウェアもダブルスーパー化を前提にしているので、パネル設定の「IF Freq.」で IF(中間周波数)を 455kHzから 10.7MHzに変更するだけで対応可能です。

また、受信レベルも変わってくるので「RS9 Level」も変更します。うちの場合は 48dBにしました。ミキサーとフィルタで合計 10dB程度のゲインがあることになります。

これで性能が上がったかというと、正直よくわかりません。tinySAを発信機にして感度を調べると少し良くなっているようです。原理的にイメージ周波数の信号は 21MHzも離れて低減されるのでそのあたりに外来ノイズがあっても影響はかなり小さくなると思います。

また、クリスタルフィルタも入るので 50MHzバンド内の他の強力な局の混信も低減されると思います。ただ、逆に混変調特性は悪くなっているかもしれません。それもあるのでミキサーの前後に抵抗を入れてあまり暴れないようにしたつもりです。(効果のほどは不明)

基板パターン図。コネクタの位置を修正した後のものなので CN1が下にずれていますが、他は全く同一です。

改めて KTR-10 / KTR-12の受信回路をダブルスーパー化する際の手順をまとめておきます。

  1. 受信基板を完成させ、シングルスーパーで動作することを確認する
  2. ミキサー基板を作る
  3. 受信基板の C10を取り去る。ニッパーで足をカットするのが簡単
  4. 受信基板に C7, C9, X1, CN5を取り付ける
  5. 接続コネクタを作る
  6. 受信基板とミキサー基板を結合する
  7. PLL0出力をミキサー基板の CN2につなぎ替える
  8. 液晶パネル設定で「IF Freq」を 10.7MHzにする
  9. 液晶パネル設定で「RS9 Level」を 48前後にする

ヒントとか

NJM2552Vのミキサーは 100MHzまでですが、NJM2288F1は本来は特定小電力用なので 500MHzまでいけます。さすがに 430MHzあたりではいろいろ面倒でしょうが、エアバンドや 144MHz AMくらいならなんとかなるかもしれません。受信回路や Arduinoのスケッチをいじる必要はありますが、試してみるのも面白いかも。

受信基板を使わず、このミキサー基板と短波も受信できる DSP Radioチップを使う方法もありますね。DSP Radioチップを 10.7MHz受信固定にすればいいわけですので。Si4735/Si4732であれば SSBパッチもあるので SSB受信も可能になります。DTR-23で既にやってますが。

ミキサー基板とは関係ありませんが、旧受信基板には「RSSI」と書いたランドがあります(新基板では CN1に信号が出ています)。ここは NJM2552Vの RSSI出力がつながっていて RSSI電圧が出ています。エミッタフォロワで信号を取り出してアナログのレベルメーターを振らせるのも乙でよろしいかと。

受信基板の R7にパラレルに 100〜330pF程度のコンデンサを取り付けるとスピーカーの高音がカットされて聞きやすくなります。

部品表


部品番号型番・値備考
コンデンサ
C11000pF C0G
C21000pF C0G
C30.01uF C0G
C40.01uF C0G
C50.01uF C0G
C60.01uF C0G
抵抗
R1330Ω
R2330Ω
R3330Ω
R42.2kΩ
R53.3kΩ
コネクタ
CN1ピンヘッダ 1x6受信基板接続コネクタ
CN2ピンヘッダ 1x2PLL入力コネクタ
半導体
IC1NJM2288F1ミキサーIC 実装済み
その他
FL1ECS-10.7-15A10.7MHz ±7.5kHz幅 クリスタルフィルタ
L122uH
受信基板の改造用部品
C733pF C0G
C947pF C0G
X110.245MHz クリスタル負荷容量 20pF程度が望ましい
CN5ピンヘッダ 1x6ミキサー基板接続用コネクタ
ピンソケット 1x6 2個基板間接続用コネクタ。2x6のピンソケット1個でもいいと思います

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