Top Page Index About Link Mail Form ●このページの応用機器製作します |
動画による動作説明はこちら。
2023.4.28
アンテナ切り替えを RF SW ICからリレーに変更
昨年作った DTR-20のパワーアップ版です。送信出力を 500mWに増加。受信も Si4732を使って中波/短波/FM放送も受信できるようにして「普段使いのできる」ものにしています。
ケースや操作部・電源部などは DTR-20と共通なのでほぼ同じ外形をしています。区別がつかないのでキートップの色だけでも変えてあります。
背面。こちらを下に置いて運用することもできます。側面には USB Type-Cコネクタがあり、内蔵バッテリーを充電できるようになっています。
斜め上から。スピーカーはマイラーコーンの物を使っているので少々の水滴程度は問題ありません。側面のコネクタはヘッドフォンとマイク用。
分解した状態。バーアンテナとそれを固定する基板が増えています。
上ケースを外したところ。バーアンテナ固定基板は一応シールド板を兼ねていますが、効果はちょっと疑問。どちらかというとスピーカーケーブルが基板回路と接触するのを防ぐのが一番の利点かも。
送信基板側から。送信基板の下に放熱器が見えています。下側ですが、2W程度の熱なので問題ないです。
名称 | 50MHz AMトランシーバー DTR-23 |
周波数 | 受信:50.000MHz 〜 54.000MHz(AM/SSB) FM放送:76.0 〜 108.0MHz AM放送:150kHz 〜 30MHz(ただし、実用感度は中波・短波域のみ) 送信:50.003MHz 〜 53.997MHz(AMのみ) |
送信 | 出力:500mW / 8V 終段FET:AFT05MS004N x 1個 電波形式:AM(A3E) 変調方式:低電力変調(NFB付きベース変調) |
受信 | 受信方式:RFアンプ+シングルスーパーヘテロダイン+DSP 中間周波数:10.7MHz DSPチップ:Si4732 (AM及び SSB受信可能。SSB patch : PU2CLR SI4735 Library for Arduino) |
制御 | MCU : STM32G070KBT6 PLL : Si5351A |
電源 | 3.7V 2000mAh Li-Po電池1個内蔵 充電入力 5V 0.5A USB-TypeC |
外形寸法・重量 | W108mm x D74mm x H44mm(突起物を除く) 重量:251g(内蔵 Li-Po電池を含む) |
送信のブロック図です。実際に保証認定を受けた時のものです。
送信基板の変調と終段増幅部分。いつもの NFB付きベース変調を使っています。PLL出力からいきなり数十mW出力の AM変調ができるので回路が比較的簡単に済んでいます。500mW出力が欲しかったので終段を追加していますが、200mWで良ければそれも無しで可能です。DTR-20はその回路構成になっています。
1kHz変調時の波形。頭が少し丸まってますが、実用上は問題ないです。スプリアスが減る状態に調整するとどうしてもこうなっちゃう。当方の技術力の限界。
追記。丸まる原因はアンテナの切り替えに RFスイッチICを使っていた為でした。なのでオーソドックスにリレーに変更しました。
RTL-SDR Scannerが動かないので代わりに Gqrxによるスペクトラム。1kHz変調時のものです。40dBのアッテネータを入れてあります。
Gqrxのスペクトラムで範囲を広げた状態。近傍に変なスプリアスは無さそうです。
tinySAによる 10〜310Mhzのスペクトラム。問題になりそうなスプリアスは無い様子。
アンテナの送受信回路切り替え、アマチュア無線の自作では一般的にはリレーが用いられていますが、最近は RFスイッチICというのもあるのでわたしはそちらを使っていました。自作を始めた当初は 50mWとか 150mW出力で問題なく使えてたのですが、最近はどうも変調波形のピークが伸びない、また、スプリアスも減りにくいなと思っていました。ある日、ある RFスイッチICのデータシートを眺めていたら周波数が低くなると扱える電力が極端に小さくなるのに気がつきました。RFスイッチICにとっては 50MHzは低すぎるようで、わたしが使っていたものではピークで 1Wが出ないのでした。うちの場合は FM放送も受信できるようにアンテナの切り替えの外側(アンテナ側)には LPFは入れていません。RFスイッチICでクリップして歪が出るとそれがスプリアスの原因にもなっていました。
というわけでアンテナ切り替え回路を RFスイッチICからリレーに変更。最近のリレーは小型ではありますが、SOT-23のチップICと比べたら巨大なこと。
なお、画像の右側はついでに作りなおした受信回路基板です。ミキサー回路がユニバーサル基板になってたのをパターン設計し直したものです。回路としては変更ありません。
→DTR-23 リレーを使った送信回路基板回路図(PDF)
→2024年2月版の送信基板回路図(PDF)
変調波形。ピークでちゃんと 2Wが出せるようになったのできちんと正弦波波形になっています。右側の画像は音声を入力した時のもの。深い変調がかかっていると思います。
変調のスペクトラム。RTL-SDR.COM V3を使い、rtl_power_fftw で出したものをプロットしています。縦軸は dBですが、ゲイン設定がよくわからないのでとりあえず相対値で見てください。1kHzの正弦波を入れていますが、高調波も少なく、よい変調だということがわかります。
2023.5.1 追記。
ピークを 0dBcとして表示するようにしてみました。一応 500mW出力なのでピークの絶対値は 27dBmということで。
変調歪みによる2次・3次高調波が少しありますが全く問題ないレベル。
ちなみに rtl_power_fftwのパラメータは以下のとおり。RTL-SDRには 50dBのアッテネータを入れてあります。
#!/bin/bash FREQ=50620000 let FROM=$FREQ-20000 let TO=$FREQ+20000 # 測定 rtl_power_fftw -g 0 -f $FREQ -n 100 -b 65536 > test.dat # プロット gnuplot -e "set xrange [$FROM:$TO]; set term png size '1024,768'; set format x '%3.3s%c'; set grid; unset key; plot 'test.dat' using 1:2 with lines" >plot.png # 表示 lximage-qt plot.png
tinySAでスプリアスを確認。出力が 1W以下なので -13dBm以下である必要があります。50dBのアッテネータを入れてあるので実際の値は +50dBしてください。なお、tinySAの High入力を使って 300MHz以上も見てみましたが、特に問題ありませんでした(たぶん)。
受信回路のブロック図。
FM放送と 150kHz〜30MHzが受信可能な DSPラジオ ICの Si4732を使って多機能かつ高性能(たぶん)な回路になっています。50MHz受信は RFアンプとミキサーで 10.7MHzへ周波数変換して帯域の広いクリスタルフィルタを通してから Si4732で処理しています。Si4732はパッチを使うことで SSBの受信もできます。
50MHzの RFアンプは第2ゲート電圧を D/Aコンバータで制御してゲイン調整ができるのでソフトウェアによる AGC処理を行っています。また、必要に応じてここの電圧を下げれば受信アッテネータとしての動作も可能です。
中波帯はバーアンテナだけで十分な感度があります。短波は BPFと NJM2275による広帯域アンプを追加しています。FM放送も BPFだけで感度は十分だと思います。
受信回路基板。基板上の小さなユニバーサル基板はミキサー部分が組まれています。後でまたちゃんとした基板を作る予定。
3SK291を使った50MHz RFアンプの AGC特性。D/Aの設定値を 20〜127と変化した時の RSSI値をトレースしています。D/A設定値 127は第2ゲート電圧 3.3Vにあたります。通常は 80程度、約2Vにするとドレイン電流約10mAで動作させることになると思います。なお、第1ゲート電圧は約1.5Vにしています。
D/A設定値 80あたりから Si4732の内部AGC処理が働き出して、グラフとしてはそこから上昇がなだらかになっていると思われます。
受信シグナルが9を超えるくらい強いのが来たらここの電圧を下げてやることで「ソフトウェアAGC」の動作をさせます。Si4732自体で AGC処理も行いますが、それを補う感じ。特に今回使ったミキサーは混変調特性があまり良くないと思われるので、バンド内に強力な局がいる場合は定常的に電圧を下げてアッテネータとしても動作させることができます。
なお、このミキサー NJM2288F1は小型で安くて低電圧で電流も食わないので、混変調特性があまり気にならないのであれば利用価値は大きいと思います。
10.7MHz IFの周波数特性。クリスタルフィルタ(ECS-10.7-15A)の特性になっています。安価なものなので通過帯域がクリスタルフィルタとしては広いですが、この後は Si4732の強力な DSP処理があるのでこの方がむしろいいかと。
逆に、Si4732の DSP処理が強力なのでクリスタルフィルタは不要では?というご意見もあるかと思います。かもしれませんが、Si4732内部の LNAにはハードウェアAGCがついているのでそれを飽和させないように不要な周波数は除いた方が感度も上がると思います。まあ、それほど高い部品じゃないし。
頂上部分を拡大した IF特性グラフ。通過帯域が微妙に低い方にずれているので IF周波数は正確には 10.698MHzで使っています。
感度の確認。tinySAはシグナルジェネレータとしても使え、AM変調もかけられます。自作の 40dBと 30dBのアッテネータを入れて出力を下げて変調音が聞こえるか確認します。tinySAの出力を -55dBmにしたあたりで音が聞こえるか聞こえないかギリギリの状態になりました。どこまで正確なのかはわかりませんが、この場合はアッテネータの分も合わせて -125dBmの信号がギリギリ聞こえたということになるかと。ちなみに同じものをうちの FT-680につないだらもう 2〜3dB下げたあたりで聞こえなくなりました。
今回のリグは 3SK291を使った RFアンプにしましたが、実際に使ってみるとノイズが少なくて大変FBに思います。更に、弱い信号の場合は SSBモードにすると感度や対ノイズ性が良くなります。QRPpの AMトランシーバーとしてはもったいないような性能になったのかもしれません。
→2024年2月版の受信基板回路図(PDF)
表面パネル・MCU基板。DTR-20とほぼ同じですが、ラジオ放送を受信するので周波数のメモリー用に EEPROMを追加してあります。
表面パネル・MCU基板の裏面。MCUはこちらに実装されています。
コネクタ・電源・オーディオ回路基板。これも DTR-20とほぼ同じです。多少パターン修正はしてありますが。
コネクタ・電源・オーディオ回路基板の裏面。ジャンパーピンを外すと Li-Po電池が切り離されます。外部電源を繋ぎっぱなしでもっぱらラジオとして使う場合に過充電で電池の寿命が短くなりそうな使い方をする場合は外すといいでしょう。ただ、充電回路の最大電流が 0.5Aなので切り離すと送信電流は足りなくなると思います。
開発時のボツ基板の群れ。いろんな理由で何度も作り直しています。部品が取り外されたものもありますが、次の基板で再利用してたりします。表面実装は取り外しやすいので。