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無線機の調整用に特化したオーディオシグナルジェネレータの自作

2020.9.21
→【NFB付きベース変調/ゼネラルカバレッジ受信】・自作6mAMトランシーバー TRX-506
→TRX-505M / NFB付きベース変調を用いた 6mAM 自作機
→50MHz AM QRPトランシーバー TRX-505 の製作
→50MHz AM QRPpトランシーバー TRX-504 / TRX-503S の製作
→50MHz AM QRPpトランシーバー TRX-503 の製作
→50MHz用 SKYDOORループアンテナを自作して通信実験
→50MHz専用 グラフィカルSWR計の製作

アマチュア無線のトランシーバーの自作の際、市販の簡易型シグナルジェネレータを使っていましたが、そのロータリーエンコーダが壊れてうまく動かなくなってしまいました。ものすごくゆっくり回せば正常に動くのですが、ちょっとでも速いと上げるつもりが下がっていたりでストレスが溜まる状態。テンキーボタンで直接周波数や波高値を設定することもできるのですが、変えながら具合を見る時にいちいち面倒。作ってしまえ!

というわけで作りました。最近の MCUにはいろいろ機能が入ってるのでそれらを使えば回路はかなり単純になります。

側面方向。基板サイズは秋月の Cタイプ基板と同じサイズ、穴位置にしたので、裏面にそれ用のアクリル板を取り付けてあります。

今回は STM32F303K8T6を使用。内部クロック 72MHzで動作し、DMAと 12bit D/Aを内蔵。D/Aは今としては少々精度が低めではありますが、DMAを使って高クロックで出力すればかなり高品位の正弦波が得られるはず。そもそも、前に使ってたシグナルジェネレータの D/Aは 8bitだったし。

STM32F303には FPUも内蔵してるので正弦波のテーブルを作成するのに便利。とは言え、さすがにリアルタイムで正弦波計算はできないので、あらかじめ1周期分を計算して RAM上のテーブルに格納し、あとは Timer + DMA + D/Aで自動的に波形を出力します。

ツートーン波形と波高増大型正弦波(後述)の場合は出力値が刻々と変わるので、計算を高速化する為に sinテーブルのを事前に用意し、転送時に DMAのタイミングを見計らって半周期分づつリアルタイム計算していきます。

あくまでも無線機のテスト用と割り切った仕様になっています。周波数範囲は可聴域に限る他、精度も最大 2%くらいの誤差があります。これは正弦波テーブルのサイズとの兼ね合いによります。その為、キリのいい周波数の場合は誤差ゼロ(水晶発振子の精度)になりますが、半端な場合は多少の誤差が出ます。また、ツートーンや波高値増大型正弦波の場合は計算の速度が間に合わないので上限 5kHzということになっていますが、無線機の場合は通常、3kHz以上はカットするので支障ないかと。

ロータリーエンコーダで設定値を変更できますが、こちらも割り切った仕様。有効数字2桁だけ。つまり、1000Hzの次は 1100Hz、1200Hzと変わるようになっています。9900Hzの次は 10kHz、11kHzと変わるようにしてあります。波高値も同様。無線機の調整用ならこれでいいでしょ?

→回路図(PDF)

出力周波数20Hz 〜 20kHz
出力レベル0 〜 4.5Vp-p
出力電流最大250mA
出力波形正弦波 矩形波 三角波
ツートーン(正弦波x2)
波高増大正弦波(疑似トラペゾイド)
電源5V 0.3A以下(無負荷時の消費電流は 30mA程度)

正弦波の出力波形。当然ながら美しくて気持ちのよい波形です。

正弦波が出せるなら矩形波と三角波の出力は簡単です。ただ、無線機の調整にはあまり使わないかなと。高調波を多分に含むので、マイク回路の LPFでそれらがカットされ、だいぶ異なる変調出力になります。

あと、出力に DCカット用の電解コンデンサを使ってあるので、数十Hzくらいの低い周波数の矩形波では水平部分の波高がだら下がりになりますが、こちらも無線機調整では使わないから問題ないということで。

2つの正弦波を出力するツートーン波形。下の方の周波数は基本的に 700Hz固定です。上の方はロータリーエンコーダでそれ以上〜5kHzまでを可変できるようになっています。

ツートーン波形で AM変調するとこんな感じになります。

波高増大正弦波。「(疑似)トラペゾイド」というようなもの。これは単一周波数の正弦波を、波高値0からロータリーエンコーダ設定の値まで徐々に上げていき、最大値になったらまた波高値0から繰り返します。

無線機の AM変調具合を見るために「トラペゾイド波形」を見るということをします。これは無線機の変調出力(オーディオ)をX座標、無線機の RF出力をY座標とした波形が、変調が良好な場合は綺麗な台形(トラペゾイド)になるというものです。

これと同様に、マイク等の入力に「徐々に波高値が大きくなる正弦波」を加えれば似た形で AM/SSBの変調具合を確認できるというものです。正直言うと、わたしの勘違いから生まれたモードなのですが、無線機のフタを開けずに具合が見られるので利用価値もあるかと。

この「疑似トラペゾイド」で実際に AM変調した時の波形はこんな具合になります。

変調具合のチェック。RFアンプの直線性が良い場合は画像の赤い線の部分が直線で、上下の線は対称になるはずです。この画像の場合は下の方は良好ですが、上の方は赤い線より下がっていて少し鈍っていることがわかります。

上記の場合の実際の正弦波・変調具合です。ピークが鈍っていることがわかります。ただ、この程度でも音質・変調スペクトル的にはそれほど問題ないようです。

変調が良好であればこんな感じ。


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