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50MHz AM QRPpトランシーバー TRX-503 の製作 / JR0DBK

2019.3.31
→50MHz用 SKYDOORループアンテナを自作して通信実験
→50MHz専用 グラフィカルSWR計の製作

学生時代はアマチュア無線部で、その頃から自作のトランシーバーで ON AIRしてみようと思ってました。あちこちの本や雑誌から回路をコピペしてなんかそれっぽいモノを作ってみたものの、知識も測定器等も無いので全く動きませんでした。それからン十年経ち、気がついたらそれなりの測定器と、専門ではないもののある程度の高周波の知識もついたので、簡単なトランシーバーであれば作れそう。やってみました。とりあえず FCZポケトラみたいなのをと思ったのですが……。

というわけで 50MHz AMトランシーバー TRX-503基板。50mm x 100mm の基板1枚に全回路を載せています。業者に発注してプリント基板を作り、多数の表面実装部品を並べている(部品は手ハンダで自分で実装しています)ので昔の「自作トランシーバー基板」とはかなり趣が異なります。液晶表示はついてるし電池はリチウムイオン電池だし。コントローラーとして 32bit ARMを使ってたりするし。

2018年9月頃から半年ぐらいかけて作りましたが、部品数がかなり膨れ上がりました。これは周波数をマイコン制御する為の他、新スプリアス規定に準拠する為に気を使う為とも言えるかと思います。

TRX-503基板の裏面。こちらには比較的背の高い部品を並べています。

レーザーカットアクリルで作ったケースに入れたところ。カットされたアクリルを組み合わせるのでどうしても角張ってしまいますね。

手に持つとこんな感じ。約110gなので軽いです。液晶はバックライト付き。左側面には PTTスイッチとヘッドフォン用ジャックがあります。ストラップ用ホールも。

上部と右側側面。上部にはレバースイッチがつけてあります。これで周波数の変更が可能です。2段階のスピードでチューニング可能……なのですが、操作が微妙すぎて正直あまり使いやすくないような。側面のダイアルは音量設定用ボリュームです。

底面に microUSBコネクタがあり、内蔵 Li-Po電池を充電できます。スピーカーの右側にある小さな突起が電源スイッチになっています。

2019.4.9
変更申請が受理された通知が来た。これで波が出せる!

2019.4.13
長岡市旧栃尾市街地の秋葉公園で通信テスト。以下の問題が見つかった。

  1. マイクの感度が良すぎ。普通に口を近づけて喋るとレベルが大きすぎる。数十cm放して普通に喋るのがちょうどいいくらい。それでもマイクアンプの ALCが効きすぎて周囲の音が入る。トランシーバーのボディを触る音とかログを書く時の紙の音とか。スピーカーフォンみたいな感じ
  2. 送信終了後、受信部の AGCが効きすぎて感度ゼロになってそのまま直らない。送信終了後に受信モードを一旦 FMにしてまた AMに戻すと直る
  3. ヘッドフォンジャックの切り替えがおかしくなるようだ

対策。マイクの周辺音の感度については NJM2783Vの 11ピンの抵抗値を 10kΩから 2.2kΩに変更。ただ、そうすると出力レベルも落ちてしまったので 13ピンの足を上げて電源ピンとつないだ。こうするとアンプゲインが 20dB上がるので以前のレベルを維持できる。これでいいはずだが、実際に通信テストしないとなんとも。

感度ゼロになったままなのは AGCの異常動作が根本原因なのだが、受信に使っている KT0915の内部動作なので手が出せない。しかし、一旦 FMモードにすれば直るので、送信終了して受信する際にスピーカーミュートのまま、FMモードに切り替えてからすぐに AMモードにすることにした。また、ソフトウェア AGCの方も Lowゲインからスタートするようにした。これでとりあえず問題ないようだ。

ヘッドフォンジャックの切り替えはハンダづけの不具合で切り替え接点の動作が中途半端になっていた模様。つけ直したら直った。

2019.4.16
kt0915を使ったAMFMラジオ:こちらのページを見て KT0915の水晶発振子を 38kHzにしてみた。なんかいいような気がする。

2019.4.28
旅行のついでに動作テスト。マイクレベルも概ねOK。

2019.5.3
SKYDOORループアンテナで通信実験を行いました。50mWで 45km先まで届きました。


回路について

プリント基板を作れるのとチップ部品のハンダづけを厭わないので積極的に表面実装部品を使っています。ただ、手ハンダなので足の無い BGAなどは使えませんが。

送信回路。AM変調はコレクタ変調ではなく、DBMのバランスを崩してキャリアを漏らして AM波を作る方式でやっています。最初は SA612Aでやっていましたが、電子うさぎさんとこの良記事が出てから NJM2594でやっています。

PLLで 50MHzを発生させていますが、Si5351Aは矩形波が出てくるので LPF, BPFを通して比較的綺麗な正弦波を発生させています。LPFは NFL18ST706H1A3D というチップ部品です。本来は EMI対策用みたいですが。小さすぎるのでハンダづけが困難。その後の BPFもチップの Lと Cで構成しています。

マイクアンプには NJM2783を使用。ALC(オートレベルコントロール)を内蔵しているので大声・小声でも安定した変調がかかると思います。過変調によるスプリアスも防ぎます。また、回路のコンデンサを調整して周波数範囲約300〜3kHzのみを増幅するようにしてあります。更に簡単な LPFも追加して変調波の帯域幅が広がらないように。

送信リニアアンプは FCZポケトラと同様の 10mWと思いましたが、紆余曲折あって最終的に 50mW出力となっています。終段が 2SC3357を2個使っていますが、高周波に慣れた先輩方であれば1個で済ませられるのではないかと思います。入力電圧が 6Vと低いこともあり、2個、プッシュプルで動かしています。偶数次高調波も減るかなと。ちなみに電源はリチウムイオン電池の 3.6V程度を LTC3445を使って 6Vを発生させています。前段増幅の MMFBJ310は U310/J310の表面実装版ですね。

最後にトロイダルコア2個使った BPFでスプリアスを抑えます。50mWという低出力ですが、スプリアス基準が厳しくなってるのであちこちで気を使います。

受信部。3SK291による RFアンプの後、SA612Aで周波数変換。10.7MHzに落として KT0915で IF増幅・検波・AF増幅をしています。KT0915は 短波帯も受信できるので利用していますが、せっかく FM放送も受信できるのでアンテナに 80MHzの BPFをつないで受信できるようにしてあります。

RF AMPは過大入力時にゲインを絞れるようにしたいものですが、KT0915はそれ自体で完結したラジオチップ(スピーカーアンプも内蔵してる)なので AGC出力ピン等がありません。ですが、I2Cによる制御で RSSIレベルが MCUから読み出せるので、それを見て 3SK291の 2ndゲートの電圧を上げ下げすることで AGCをかけます。と言ってもこちらはあくまでも過大入力時にゲインを絞るだけで、通常は KT0915の内蔵AGC処理が主に効くことになります。

送信にも使っている PLL Si5351Aは 100Hz単位で周波数を設定できるようにしてあります。Si5351Aと SA612Aの間にも送信部と同様の LPFと BPFを入れてあります。

最後にスピーカーアンプとして TPA0233というのを使っています。ヘッドフォンコネクタ使用時はステレオ、コネクタを抜くとスピーカーをモノラルで BTL駆動するという便利な ICです。なので FMはヘッドフォンを使えばステレオで聞けます。ただし、LPFが入っているので Hi-Fiではないですが。KT0915の出力はスピーカーも駆動できるのですが、チップに大電流が流れるので受信回路に影響しそうなのと、聞きやすいように LPFを入れたかったので外付けのスピーカーアンプを使っています。

→回路図(PDF)


基板製作ヒストリー

一番最初に作った TRX-01基板。FCZコイルを使っています。

TRX-01に最低限の送信回路を組んだところ。

TRX-01基板、ひととおり完成。最初は液晶は8桁表示で上についてました。

TRX-01基板の裏面。この基板は Si5351Aの PLLを搭載してますが、それとは排他使用で 50.62MHz等の水晶発振子を実装して単一周波数出力もできるようになっていました。それはシグナル・ジェネレータとして今でも受信回路の調整・設定などに使っています。

出力が小さすぎたので送信アンプを追加実験。この基板は SA612Aを変調に使っています。

TRX-03基板。TRX-02は発注したのだが組み立てていない。

FCZコイル(7mm角)と今回使ったコイル・トランス類。TRX-503では FCZコイルを使っていません。別に嫌ってるわけではなく、今後、入手しづらくなると思われるので代わりのものを模索してみました。小さなシールドに入ったのはムラタのバリアブルインダクタ #A1313AN-0001GGH=P3。100MHzくらいの FCZコイルみたいに使えそうですが、2次側(巻数の多い方)のセンタータップがありません。その隣の小さいのが高周波トランスの MABA-009488-61HWCA。あと、送信アンプ部で2つ穴のフェライトリング(いわゆるメガネコア)を使った手巻き高周波トランスも使っています。改めて FCZコイルの便利さを実感した次第。

TRX-501基板。4番目の基板にあたります。

ミキサーと DSP Radioチップの間のトランス。

TRX-501基板の裏面。

TRX-502基板。5番目だけどまだ完成じゃない。

TRX-502基板の裏面。ツマミがついてるのはボリュームと周波数変更用のロータリーエンコーダ。

TRX-503基板。これでひとまず完成ということに。


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