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試作機には以下の不満点がありました。
ポップノイズについてはその後いくつか実験したのですが、特に解決策は見いだせていません。電力的な余裕と設置スペースがあればリレーを入れてしまうのが一番いいのですが、ポケットプレーヤーとしては採用できません。(註:その後、フォトMOSリレーを使って対策しました。)
ボタンの配置についてはそのように作ればいいわけなのでよいとして、充電用の ACアダプターコネクタについてはいっそのことつけないことにしました。当然、充電回路も不要となり、回路がシンプルになります。消費電力が少ないので通常の使用なら2、3日持ちますし、ちょっとした旅行であれば予備電池を持っていけば済むことです。
また、電池を単四×3本から単三×2本にすることで、アルカリ電池を使ったり、他の機器用の電池を流用しやすくすることにしました。ただし、2本だと回路に必要な電圧(3.3V)が不足しますので DC-DCコンバータが必須となります。
以上により決まった仕様が次のとおりです。電源関係以外は試作機と全く同じです。
主要LSI |
MCU:ATmega8(ATMEL) DSP:VS1001K(VLSI) DAC:VS1001Kに内蔵 |
---|---|
記録メディア |
MMC/SDカード 容量:8MB, 32MB, 64MB, 128MB, 256MBで動作を確認 フォーマット:FAT12, FAT16 ロングファイル名でも問題無し ルートディレクトリの拡張子が MP3のファイルのみを演奏する MP3以外のファイルは無視する FAT32には未対応 |
操作キー |
電源ON/OFF 兼 再生 兼 停止、逆方向スキップ、 順方向スキップ、ボリューム+、ボリューム− |
対応データ形式 |
MPEG 1 & 2 Layer-3, Layer-3の 2.5拡張 VBR対応 全てのサンプルレート、ビットレートに対応 ビットレートは 320kbpsだと音が途切れることがある 300kbps以下なら大丈夫だと思う |
データ転送・管理 |
パソコンの SDカードリーダライタで SDカードのファイルを管理 その SDカードを本体スロットに差し込んで再生する 自身には SDカードに書きこむような機能は無い |
サイズ |
95mm(W) x 58mm(D) x 18mm(H) (タカチ SW-95Bを使用) 質量:未測定 |
電源 |
単3型 Ni-MH電池×2本 アルカリ電池も使用可 |
消費電力 |
再生中:128kbps MP3の場合、2.4Vで実測約70mA、2.4x70=168mW ビットレートが上がると消費電力は少し増える 待機時:0 |
その他 |
液晶ディスプレイ、リモコン等は無し ヘッドフォン端子は一般的なΦ3.5ステレオのタイプ |
電源関係を大幅に変更しました。まず、充電回路を省きました。更に、電池を2本構成にしたので、3端子レギュレータの代わりに MAX778を使った DC-DCコンバータを使っています。部品は現品.com(現在、受付終了)の MAX778パーツセットを利用しました。電源の ON/OFFは MAX778の SHDN(シャットダウン)端子でコントロールする方法もありますが、電池の電圧を測る為にその前段階に MCUの A/Dコンバータをつなぐ必要があるので PNPトランジスタをわざわざ使って ON/OFFしています。こうしないと電源を切った状態でも電流が流れてしまいますからね。
電池電圧を測る A/Dコンバータの基準電圧は、試作機では TL431を使っていましたが、今回は ATmega8内蔵基準電源を使っています。正直あまりあてにしてなかったのですが、公称 2.56Vのところ、実際は約2.55Vと意外に正確でした。
充電回路を削除してしまったので、MMC/SDカードの電源のみを ON/OFFする回路も削除してシンプルになりました。ついでに EasyMP3との接続もイレギュラーな部分があったのを直しました。
3端子レギュレータの代わりに DC-DCコンバータというノイズ発生源を使うのはどうかとも思いましたが、実際は全く問題ありませんでした。真夜中に耳を澄ませてもノイズは全く聞こえません。ただし、ラジオを近づけると当然ラジオにノイズが入ります。これは試作機でも発生していました。一応、秋葉原のジャンク屋で入手したフェライトビーズをヘッドフォンコネクタの所に気休めに入れてありますが、効いているかどうかはよくわかりません。
2003.7.1追記
アルプス電気の通信販売システム「電即納」で SDカードコネクタが購入できます。このコネクタは SDカードを押し込むとロックされ、もう一度押すと飛び出してイジェクトできるタイプのものです。とても具合がいいのですが、5個単位の購入なのがちょっと残念。
2004.1.7追記
VS1001Kはデータシートではクロック入力の最大は 13MHzになっていますが、EasyMP3では 14.31818MHzの水晶が使われています。そのせいかごくまれにクロック設定に失敗して再生スピードがおかしくなることがあるようです。現在、わたしのプレーヤーでは水晶を 12MHzに交換して使っています。これに伴ってファームウェアの変更も必要となります。
→回路図
→ファームウェアソース (2004.12.18)
→Intel Hex バイナリ(12MHz)
→Intel Hex バイナリ(14.31818MHz)
→Makefile
Old Version
→ファームウェアソース/バイナリ(12MHz)アーカイブ 2004.1.16
→ファームウェアソース/バイナリ(14.31818MHz)アーカイブ 2003.11.18
EasyMP3を使ううえで悩みだったのが電源投入時の「ボツッ」というポップノイズです。この MP3プレーヤーでは電源スイッチと PLAY/STOPボタンを兼ねているので頻繁に電源を ON/OFFすることになります。その都度大きなノイズが発生するのが不快でした。(と、言いつつ、慣れてしまうとあまり気にならなかったりもしましたが。)
ヘッドフォン出力部分にリレーを入れ、電源投入してしばらくしてからリレーを ONにするようにすればいいのですが、電池駆動している機器で数十mAの電流をとられるのではたまりません。それならばというわけでフォトMOSリレーを使ってみました。今回使った東芝の TLP596Aは LED電流は 1mA以上あれば ONになります。また、出力側の MOS-FETの ON抵抗は2Ω以下で、音質的にもあまり影響は無さそうです。実際に聴いてみても歪み等は特に感じられませんでした。
追加した回路は上の図の通りです。TLP596Aの LEDの ON電圧はけっこう低くて 1.1V程度なので、3.3V回路でありながら直列にしても十分に ONできます。これで約1mA流れます。R14,15は出力のショートや静電気の保護用の抵抗です。R16,17はフォトMOSリレーが OFFの時にポップノイズの電流をこちらに逃がします。
フォトMOSリレーを ON/OFFする為に MCUのポートがもう一つ必要になります。全てのポートが接続済みだったのですが、EasyMP3の SO(データ出力)はプログラム的には未使用だったのでそのポート(PB1)をこちらで使うようにしました。
ソフト的には電源投入後、十分時間が経ってからフォトMOSリレーを ONにすればいいわけです。EasyMP3のポップノイズは RESETを Highに立ち上げた直後から発生するようです。今回のように R16,17が 1kΩだと 0.3秒以上持続するらしく、0.4秒待たないと完全にはポップノイズをやり過ごすことができませんでした。
以上の対策で電源投入時のポップノイズを完全に追放することができました。再生ボタンを押してから再生されるまでの待ち時間が少し長くはなりましたが、許容範囲内だと思います。消費電流の増加も 1mA程度ですからバッテリーの稼働時間にもほとんど影響しません。これで試作機の不満点が全て解決しました。めでたしめでたし。