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Ten-Tec社の BCLラジオキット Model 1254の改造です。
→入手・製作編へこのキットには 7SEG LEDドライバとして 74LS47が使われていますが、これは6の上のバーと9の下のバーが点灯せず、わたし好みではありません。そこでピン互換の 74LS247を代わりに実装します。
74LS47による表示 | |
74LS247による表示 マスキングテープは作業中に傷がつくのを防ぐ為 |
製作前に 74LS247を入手しておいてこれを実装すれば何の苦労も無いのですが、既に製作済みである場合はちょっと大変です。細いニッパーで 74LS47の全ての足を切り、ハンダごてを当ててハンダを溶かしながらピンセットで足を引き抜き、その後ハンダ吸い取りポンプや吸い取り線で基板の穴を確保します。その後、74LS247をハンダづけすればいいでしょう。
Ten-Tec 1254は短波では比較的高感度なのにもかかわらず、中波での感度はよくありません。1st IF以降は同じ回路を同じ周波数で使っていますので、原因はそれ以前の部分ということになります。回路図を見るとアンテナとミキサーの間にバンドパスフィルタが入っているのですが、これがどうも怪しい。調べてみた所、バンドパスフィルタのうちのハイパスフィルタ部分のカットオフ周波数がどうやら 900kHz前後になっているようです。
そこでここをいじってみました。たまたま手元に 0.047μFのマイラーコンデンサが2個あったので C89, C90に各々一つづつ、C74に 0.1μFを基板の裏面にパラレルにハンダづけしてみました。これでカットオフ周波数が計算上は約190kHzになります。中波の感度が良くなりました。
この回路のインピーダンスは 75Ωみたいなので、fc=300kHz で LC Filter Designで再計算してみると、C89, C90は 0.0068μF、L16は 22μHにすればいいようです。C74は 0.022μFくらいに変更すればいいのではないかと思いますが、自信がありません。
というわけで C89, C90, L16, C74をこの値の物に交換してみました。コンデンサはオリジナルとおなじくマイラーコンデンサを使います。中波の感度もよくなり、短波領域の副作用も特に無いようです。これがベストの値ではないかもしれませんが、満足できる状態になったと思います。なお、これらのコンデンサとコイルはシールドの中に収まっている為、交換するのが大変です。できれば最初からこれらの値の物を組み込むといいのですが。
上記改造の具合が良かったので、更にインピーダンス 50Ω、カットオフ周波数 100kHzのフィルタに挑戦。C89, C90は 0.033μF、L16は 47μH、C74は 0.068μFに交換しました。調子いいみたいです。280kHzでロシアの長波放送らしきものが聞こえました。
その後、フィルタとパラレルに R72(220Ω)があることも考えて Zo=65Ωで再計算して次のようにしました。
部品 | 値 (fc=100kHz改造) | オリジナルの値 |
---|---|---|
C89, C90 | 0.022μF | 0.0022μF |
C74 | 0.068μF | 0.0068μF |
L16 | 47μH | 6.8μH |
コンデンサはちょうど 10倍の値になってますし、コイルもそれに近いものになってます。設計で桁を間違えたのだろうか……?
Ten-Tec 1254はアメリカ製のキットです。アメリカでは中波は 10kHzステップで並んでいます。そのためか中波も短波も区別無く 5kHz(SSBは 2.5kHz)ステップでチューニングするようになっています。ところが日本では中波は 9kHzステップになっています。クラリファイアがあるのでそれを微調整することで受信は可能なのですが、めんどうですし、やはりきっちり表示が出てほしいものです。そこでソフトウェアを変更して対応することにしてみました。ただし、オリジナルの CPUを解析するのはどうかと思いますし、わたしは PICより AVRの方が使い慣れているので CPU自体を置き換えてソフトウェアを全く新規に作成することにしました。
右側がオリジナルの CPUで PIC16C57が使われています。左側が今回製作した互換 CPUボードです。AVR AT90S4433を使っています。プログラム上から書き換えられる EEPROMも内蔵しているので、006Pのバックアップ電池なしで電源OFF時の周波数やモード、メモリーを保持することができます。(念のため、PICにも書き換え可能な EEPROMを搭載したモデルもあります。)
実際の基板に実装した様子です。この CPUボードを対象にオリジナルと同様のプログラムを作成し、そのうえで中波モードを追加します。MODEボタンを押すと AM → SSB → 中波 → AM →… となるようにします。中波モードでは PLL IC MC145170の Rレジスタをいじって基準周波数を 1kHzにし、受信周波数を 1kHz単位で変更できるようにします。そのうえでロータリーエンコーダを監視して回転を検出したら 9kHzステップで PLL分周比を変えていきます。これで操作上は 9kHzステップとなります。
同様に短波モードでも Rレジスタをいじれば 1kHzステップでチューニングできそうにも思われますが、こうしてしまうと 20.5MHzを越えた所で PLLの分周カウンタがオーバーフローして設定できなくなります。また、本来 PLL周期を 2.5kHzで設計されている所をむりやり 1kHzで動かしている為か、周波数を1ステップ動かす度にプチプチ雑音がします。小さい音なので通常は支障ありませんが、ヘッドフォンで聴くと気になるかもしれません。
それからついでに AVRの EEPROMは 256bytesあるのでメモリーチャンネルを 15chから 50chに増やしました。4KBのプログラムエリアをほとんど使い切ってしまったので、もしも機能を追加する場合は ATmega8などに交換しなければ。
上のバイナリを AT90S4433に焼き、変換基板を作って元の CPUと交換すれば中波9kHzステップ対応になります。水晶発振子などを交換する必要はありませんし、再調整も不要です。基本的に操作方法はオリジナルと同じように作っていますが、以下の点が異なります。
その他、細かい相違があるかもしれませんが、実用上問題はないでしょう。なお、1254ユーザーに限り、上記バイナリを焼いた AT90S4433を実費(1000円くらい)でお分けします。メールでお問い合わせ下さい。ただし、変換基板の作成は致しませんので自作して下さい。CN2はデバッグ用ですので実装の必要はありません。
2003.9.11 追記。回路に R1 10kΩを追加しました。これは、電源を切ってすぐにまた再投入した際に CPUが動作しないことがある不具合に対応したものです。
2003.9.25 追記。ロータリーエンコーダを秋月で売っているもの(ALPS EC16Bと思われる)と交換しても対応できるようにしました。ソースの最初のあたりの指定を変更して AVR-GCCでコンパイルしなおしてください。上記のバイナリは標準のエンコーダのものです。
この機械はそのままでは AGCの効きが少し弱いのではないかと思います。強い局と弱い局、フェージングの山と谷で音量にかなり差があるのでその度にボリュームをいじりたくなります。
それでいろいろ実験したのですが、R51の AGCアンプの入力抵抗を調整すればいいようです。標準では 10kΩになっていますが、これを少し小さくします。わたしは 4.7kΩの抵抗と 10kΩの半固定抵抗を直列にしたものと置き換えてしまいました。
抵抗値を小さくすれば AGCのかかりはよくなるのですが、そのかわりにホワイトノイズが増えるようです。ローカル局を聞きながら半固定抵抗を調節します。抵抗値を小さくしていくと音が小さくなり、ある点からノイズが大きくなります。そのあたりにすればいいのではないかと思います。AGCの効き具合は少しマシになると思いますが、今ひとつという気も…。
思ったのですが、AGCの効きが良いと感度調整がしにくくなります。キットという性格上、弱めにして調整しやすくしているのかもしれません。