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Ten-Tec 1254 製作記・FM放送受信編

Ten-Tec社の BCLラジオキット Model 1254で FM放送を受信できるようにしてみました。

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動作原理

TT1254で FM放送受信中

 Ten-Tec 1254は 45MHzの第1IF増幅と 455kHzの第2IF増幅を行うダブルスーパーヘテロダイン受信機です。100kHz〜30MHzを 45MHzの第1IFにアップコンバートする為に PLLで 45〜75MHzを発振させています。この PLLを局発として利用して FM放送を受信するようにしました。受信回路は局発とオーディオアンプ以外の部分を全て新規に作成します。IFを 10.7MHzにとった場合、FM放送が 76〜90MHzですから、局発としてはそれよりも 10.7MHz低い 65.3〜79.3MHzが必要になります。そのままでは 75MHzまでしか発振しないところを VCOのコイル(L2)を少し調整して少し高い周波数も発振させます。いわば「クロックアップ」して使うようなものです。

 更に、PLLをコントロールする CPUも変更が必要です。改造編で作った CPUボードには空きポートが無いので ATmega8を使った CPUボードを作成します。こちらのボードには空きポートが2つあるので、そのうちの一つを FM受信部の ON/OFFに使います。

回路解説

 以下に FM受信基板のブロック図を示します。

ブロック図

PLL VCO出力
65.3〜79.3MHz

FM
アンテナ
バンドパス
フィルタ
70〜110MHz
ミキサー
2SK241×2
 
IFアンプ
2SC2669Y
 
セラミック
フィルタ
10.7MHz
IFアンプ
FM検波
TA7303P
AF
出力

 →回路図

 回路図でわかるように、バンドパスフィルタと広帯域ミキサーを使っていて同調回路によるチューニングを行っていません。CPUが D/Aコンバータでチューニング電圧を発生させ、可変容量ダイオードとコイルで周波数に応じた同調を行うことも考えましたが、回路としてもソフトウェアとしても大がかりになるのでやめて簡単に済ませました。

 バンドパスフィルタは計算上、70〜110MHzを通過させます。インピーダンスは 75Ωです。手巻きのコイルを使った為、不正確であることを見越してかなり余裕を持たせています。また、あわよくば PLL VCOを100MHz程度まで発振させて 108MHzまで受信できることも期待したのですが、さすがに 80MHz程度が限界のようです。その為 76〜90MHzが受信帯域となっています。90MHzを越えるとイメージ対策も考える必要がありますし。

 L1〜3のコイルと T1の高周波トランスは自作しました。作成データは以下のとおり。

L1, L2
0.8mmホルマル線を直径 5mmの筒に巻きつけて作成。巻き数は4回。
L3
0.8mmホルマル線を直径 5mmの筒に巻きつけて作成。巻き数は7回。
T1
アミドンのフェライトコア FB801 にトリファイラー巻き。巻き数は3回。

ちなみに 5mmの筒としてドリルの刃の柄の部分を利用しました。

 ミキサーの回路は JF1OZLさんPLL方式広帯域受信機の回路を利用させていただきました。また、IF増幅〜FM検波の回路は CQ出版社・鈴木憲次著「高周波回路の設計・製作」のものとほとんど同じですが、Sメーターとミューティング回路は省略しています。

組み立て

 FMアンテナは 75Ωの場合が多いので中・短波アンテナとは分け、ケース背面に穴を開けてF型コネクタなどをつけます。回路の電源の ON/OFFは CPUの空きポートを利用します。CPUソケットの 3, 5, 9, 26ピンは未使用で未接続になっていますので、そこに空きポートを接続します。7, 8ピンがそれぞれ AM/SSB検波の ON/OFFに使われているので、それに合わせて 9ピンは FM回路の ON/OFF信号にしました。10Vは3端子レギュレータ U10からとってくればいいでしょう。

 取りつけの都合と PLL回路との干渉を防ぐ為にアルミ板でメイン基板をシールドしています。PLL VCOの信号や CPUのポート信号などを引き出す部分だけ穴を開けます。FM基板の一部を切り欠いていますが、この部分にはスピーカーの磁石部分が入ります。反対側が広く空いているのにそちらに設置せず、残したのはここにまた何か組み込むかもしれないと考えてのことですが、さて…?

 PLL VCO出力は C28の部分からとってきます。オーディオ出力は U6 TDA1013Bの8ピンに加えます。TA7303Pの出力をそのまま入れると AM/SSBモード時よりレベルが大きいので 10kΩの抵抗を追加しています。


FM対応型 CPUボード

CPUボード CPUボード  FM基板を制御する為に新たに CPUボードを作成します。AT90S4433の代わりに ATmega8を用い、内蔵CR発振モードにするとポートが二つ空くのでこれを使います。画像は製作した CPUボードのものです。左側の写真の左から、オリジナルの CPU、AT90S4433を用いた前のバージョン、今回のバージョン、今回のバージョンから ISPコネクタを省いた「量産型」です。極力配線が楽になるようにポートの割り当てを変更してあります。右の写真は量産型の裏側です。どっちが表か裏だかよくわかりませんね。

 FM受信モードにはちょっと変わった方法で移行します。[MODE]ボタンを押すと AM → SSB → 中波 とモードが切り替わるのは前の CPUボードと同じです。中波モードにした状態でチューニングダイヤルを右に回していきます。1629(kHz)になっても更に右に回すと 76.000(MHz)になり、FM受信モードになります。その逆に 76.000(MHz)から左に回すと中波モードに戻ります。つまり、中波と FMのダイヤルをつなげた状態になっているわけです。SSBモードから AMモードに戻るのに [MODE]ボタンを押す回数を増やしたくなかったのでこうしました。また、FM放送はローカルの数局のみを受信することがほとんどですので、メモリーしてしまえば以後は FM受信モードに入る必要は無いでしょうから、これでもよろしいかと思います。

 FM受信モードの追加と共に設定モードが追加されています。[MW]ボタンを押しながら電源を入れると設定モードになります。設定終了後、[V/M]ボタンを押すと通常の受信モードに移行します。

ボタン操作:

[MODE]
設定メニュー番号の切り替え。[MW]を押さないと設定値の書込みは行わない
[MW]
そのメニューでの設定値を EEPROMに書込む
[V/M]
設定モードを抜けて通常の受信モードに移行
チューニングダイヤル
設定値の変更
メニュー番号機能設定範囲デフォルト備考
1エンコーダ選択1 : 通常
4 : 1/4倍速
1秋月のエンコーダは
4にするとよい
2メモリーch
表示時間
0〜5.0(秒)1.5(秒)0にすると周波数表示に
切り替わらず、ch表示のまま
3FMモードの
周波数上限
0, 77〜108(MHz)90(MHz)0にすると
FMモードは無しになる
4FMモードの
周波数ステップ
50, 100(kHz)50(kHz)TV音声は 50kHz単位が必要
5FMモードの
IF周波数
10.0〜25.4(MHz)10.7(MHz)
6VCO切替え周波数12 : 12.500(MHz)
13 : 13.240(MHz)
14 : 14.500(MHz)
15 : 15.900(MHz)
16 : 16.500(MHz)
17 : 17.950(MHz)
18 : 18.500(MHz)
19 : 19.500(MHz)
20 : 20.500(MHz)
13 (13.240MHz)FMモード用に
VCOを微調整した時に
使うかも
7CPUクロック
微調整
50〜200CPUチップにより異なる
通常は 150前後?
あまりいじる必要は無い
8設定・メモリー
オールクリア
99〜099数字を 0にして [MW]ボタンを
押すと設定値を全てクリアする
周波数メモリーも消えるので注意