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学生時代はアマチュア無線部で、その頃から自作のトランシーバーで ON AIRしてみようと思ってました。あちこちの本や雑誌から回路をコピペしてなんかそれっぽいモノを作ってみたものの、知識も測定器等も無いので全く動きませんでした。それからン十年経ち、気がついたらそれなりの測定器と、専門ではないもののある程度の高周波の知識もついたので、簡単なトランシーバーであれば作れそう。やってみました。とりあえず FCZポケトラみたいなのをと思ったのですが……。
というわけで 50MHz AMトランシーバー TRX-503基板。50mm x 100mm の基板1枚に全回路を載せています。業者に発注してプリント基板を作り、多数の表面実装部品を並べている(部品は手ハンダで自分で実装しています)ので昔の「自作トランシーバー基板」とはかなり趣が異なります。液晶表示はついてるし電池はリチウムイオン電池だし。コントローラーとして 32bit ARMを使ってたりするし。
2018年9月頃から半年ぐらいかけて作りましたが、部品数がかなり膨れ上がりました。これは周波数をマイコン制御する為の他、新スプリアス規定に準拠する為に気を使う為とも言えるかと思います。
TRX-503基板の裏面。こちらには比較的背の高い部品を並べています。
レーザーカットアクリルで作ったケースに入れたところ。カットされたアクリルを組み合わせるのでどうしても角張ってしまいますね。
手に持つとこんな感じ。約110gなので軽いです。液晶はバックライト付き。左側面には PTTスイッチとヘッドフォン用ジャックがあります。ストラップ用ホールも。
上部と右側側面。上部にはレバースイッチがつけてあります。これで周波数の変更が可能です。2段階のスピードでチューニング可能……なのですが、操作が微妙すぎて正直あまり使いやすくないような。側面のダイアルは音量設定用ボリュームです。
底面に microUSBコネクタがあり、内蔵 Li-Po電池を充電できます。スピーカーの右側にある小さな突起が電源スイッチになっています。
2019.4.9
変更申請が受理された通知が来た。これで波が出せる!
2019.4.13
長岡市旧栃尾市街地の秋葉公園で通信テスト。以下の問題が見つかった。
対策。マイクの周辺音の感度については NJM2783Vの 11ピンの抵抗値を 10kΩから 2.2kΩに変更。ただ、そうすると出力レベルも落ちてしまったので 13ピンの足を上げて電源ピンとつないだ。こうするとアンプゲインが 20dB上がるので以前のレベルを維持できる。これでいいはずだが、実際に通信テストしないとなんとも。
感度ゼロになったままなのは AGCの異常動作が根本原因なのだが、受信に使っている KT0915の内部動作なので手が出せない。しかし、一旦 FMモードにすれば直るので、送信終了して受信する際にスピーカーミュートのまま、FMモードに切り替えてからすぐに AMモードにすることにした。また、ソフトウェア AGCの方も Lowゲインからスタートするようにした。これでとりあえず問題ないようだ。
ヘッドフォンジャックの切り替えはハンダづけの不具合で切り替え接点の動作が中途半端になっていた模様。つけ直したら直った。
2019.4.16
kt0915を使ったAMFMラジオ:こちらのページを見て KT0915の水晶発振子を 38kHzにしてみた。なんかいいような気がする。
2019.4.28
旅行のついでに動作テスト。マイクレベルも概ねOK。
2019.5.3
SKYDOORループアンテナで通信実験を行いました。50mWで 45km先まで届きました。
2019.5.18
新潟6mAMロールコールに参加を試みるも、直前にいじってたマイクアンプが動作不安定になり、うまく変調がかからず、QSO不成立。orz
2019.6.9
受信回路の DSPラジオチップを KT0915から Si4730(モジュール)に変更しました。受信についての不満点はだいたい解消しました。
2019.6.15
念願の新潟6mAMロールコールデビュー。自宅だとノイズがひどくて急遽、近所の公園に SKYDOORを上げて参加。今回もキー局は多宝山からということで、直線距離は約32km。シグナルレポートRS51をいただく。
2019.6.22
Li-Po電池を 850mAhから 2000mAhに交換しました。これに伴って充電電流も 300mAから 500mAに変更しました。重量は 110gから 134gに。わずか 24gですが、持ってみると以前よりちょっとずっしりした感じも出てきました。
名称 | 50MHz AMトランシーバー |
周波数 | 受信:50.000.0MHz 〜 51.000.0MHz(AM/SSB) FM放送:76.0 〜 108.0MHz 送信:50.000.0MHz 〜 51.000.0MHz(AM) |
送信 | 出力:50mW 終段トランジスタ:2SC3357 x 2個 電波形式:AM(A3E) 変調方式:低電力変調(平衡変調) |
受信 | 受信方式:シングルスーパーヘテロダイン+DSP 中間周波数:1733kHz |
外形寸法・重量 | 54mm x 106mm x 26mm(突起物を除く) 重量:134g(内蔵 Li-Po電池を含む) |
ハムフェア 2019出展しました。
→【ハムフェア2019】<CB機のスプリアス簡易測定デモから各社コンパニオンまで>会場でhamlife.jpスタッフが“気になったモノ&人&光景”一挙紹介
プリント基板を作れるのとチップ部品のハンダづけを厭わないので積極的に表面実装部品を使っています。ただ、手ハンダなので足の無い BGAなどは使えませんが。
【送信回路】
AM変調はコレクタ変調ではなく、DBMのバランスを崩してキャリアを漏らして AM波を作る方式でやっています。最初は SA612Aでテストしていましたが、電子うさぎさんとこの良記事が出てから NJM2594でやっています。変調部分は電子うさぎさんの回路をそのまま利用させていただいてます。
PLLで 50MHzを発生させていますが、Si5351Aは矩形波が出てくるので LPF, BPFを通して比較的綺麗な正弦波を発生させています。LPFは NFL18ST706H1A3D というチップ部品です。本来は EMI対策用みたいですが。小さすぎるのでハンダづけが困難。その後の BPFもチップの Lと Cで構成しています。
マイクアンプには NJM2783を使用。ALC(オートレベルコントロール)を内蔵しているので大声・小声でも安定した変調がかかると思います。過変調によるスプリアスも防ぎます。また、回路のコンデンサを調整して周波数範囲約300〜3kHzのみを増幅するようにしてあります。更に簡単な LPFも追加して変調波の帯域幅が広がらないように。
NJM2783の回路はデータシート準拠でも問題ないと思いますが、一点、12ピンのコンデンサは 0.1μF以下にした方がよろしいかと思います。データシートの 1μFだと NJM2783の電源が入ってから音声出力が出るまでに2秒程度の遅れが生じます。NJM2783の電源が入りっぱなしならともかく、送信時にのみ電源が入る回路の場合は PTTを押してから変調がかかるまでのタイムラグが発生してしまうので。それから、1-2ピン間には大きなコンデンサをつなぐと動作が不安定になるようです。
送信リニアアンプは FCZポケトラと同様の 10mWと思いましたが、紆余曲折あって最終的に 50mW出力となっています。終段が 2SC3357を2個使っていますが、高周波に慣れた先輩方であれば1個で済ませられるのではないかと思います。入力電圧が 6Vと低いこともあり、2個、プッシュプルで動かしています。偶数次高調波も減るかなと。ちなみに電源はリチウムイオン電池の 3.6V程度を LTC3445を使って 6Vを発生させています。前段増幅の MMFBJ310は U310/J310の表面実装版ですね。
最後にトロイダルコア2個使った BPFでスプリアスを抑えます。50mWという低出力ですが、スプリアス基準が厳しくなってるのであちこちで気を使います。
【受信回路】
2019.6.9 追記。受信DSPチップを KT0915から Si4730モジュールに変更しました。Si4730は AMは中波帯のみの受信となるため、中間周波数は 10.7MHzから 1733kHzに変更しました。
3SK291による RFアンプの後、SA612Aで周波数変換、1733kHzに落として Si4730で IF増幅・検波・AF増幅をしています。Si4730は AMは 1710kHzまでという仕様になっていますが、1800kHz程度までは問題なく動くようです。
Si4730は AM放送の他、FM放送も受信できるのでアンテナに 80MHzの BPFをつないで受信できるようにしてあります。
送信にも使っている PLL Si5351Aは 100Hz単位で周波数を設定できるようにしてあります。Si5351Aと SA612Aの間にも送信部と同様の LPFと BPFを入れています。
スピーカーアンプとして TPA0233というのを使っています。ヘッドフォンコネクタ使用時はステレオ、コネクタを抜くとスピーカーをモノラルで BTL駆動するという便利な ICです。なので FMはヘッドフォンを使えばステレオで聞けます。ただし、LPFが入っているので Hi-Fiではないですが。Si4730の出力はスピーカーも駆動できるようですが、チップに大電流が流れるので受信回路に影響しそうなのと、聞きやすいように LPFを入れたかったので外付けのスピーカーアンプを使っています。
【Software AGC】
RF AMPは過大入力時にゲインを絞れるようにしたいものですが、Si4730それ自体で完結したラジオチップなので AGC出力ピン等がありません。ですが、I2Cによる制御で RSSIレベルが MCUから読み出せるので、それを見て 3SK291の 2ndゲートの電圧を上げ下げすることで AGCをかけます。と言ってもこちらはあくまでも過大入力時にゲインを絞るだけで、通常は Si4730の内蔵AGC処理が主に効くことになります。
【BFOによる SSB受信】
Si5351A内部の PLLが余ってるので、それで中間周波数の 1733kHzを発振して BFOとし、LPFとアッテネーターを経由して Si4730に入れてやることで SSBや CWの受信もできるようにしました。
BFOは通常は AGCの効いた IF増幅の後、検波の直前あたりに入れるのが良いのですが、DSP Radioチップを使っているので RF段に入れるしかありません。そのため、BFOを ONするとその分、RSSIレベル表示も上がったりします。
Si5351Aはクロック出力の強度を4段階で変えられるので、ボタン操作で BFO出力の High/Lowを切り替えられるようにして弱い局と強い局で BFOの注入量を変えられるようにしました。更に、SSBモード受信時は Si4730の受信帯域幅を 1kHzにすることでそれなりに使えるようになったと思います。基本的にこのトランシーバーは AM用ですし。
無変調時の 40〜160MHzのスペクトルデータです。RTL-SDR DONGLES(RTL2832U) + RTLSDR Scannerを使っています。かなり誤差があるはずですが、出力が弱いこともあり、新スプリアス基準を満たしていると思います。
50〜51MHzのスペクトル。50.870MHzに妙なピークがあります。周波数をずらしても 250kHz上に必ず出てきますが、どうやらイメージのようです。FT-680で受信してみたり、Gqrxで見ても該当する部分がありません。Gqrxで見ると強い信号が一定間隔(高調波ではなく、もっとずっと短いキリのいい周波数間隔)で見えたりするのでそれと同じようなものかと思われます。
1kHz 100%変調波形。少々頭がつぶれていますが、変調音を聞く限りでは問題ないようです。
2020.5.25 追記。
回路の見直しと再調整で綺麗な波形になりました。
修正点と調整方法:
・終段エミッタの所の抵抗値を小さくした
・トランジスタの電源供給ラインに大きめのコンデンサ(10〜22uF)追加
・出力の T型フィルタの Qを下げてマッチング範囲を広げた
・T型フィルタの調整は多少の過変調状態でもピークが綺麗に出るようにする
一番最初に作った TRX-01基板。FCZコイルを使っています。
TRX-01基板、ひととおり完成。最初は液晶は8桁表示で上についてました。
TRX-01基板の裏面。この基板は Si5351Aの PLLを搭載してますが、それとは排他使用で 50.62MHz等の水晶発振子を実装して単一周波数出力もできるようになっていました。それはシグナル・ジェネレータとして今でも受信回路の調整・設定などに使っています。
出力が小さすぎたので送信アンプを追加実験。この基板は SA612Aを変調に使っています。
TRX-03基板。TRX-02は発注したのだが組み立てていない。
FCZコイル(7mm角)と今回使ったコイル・トランス類。TRX-503では FCZコイルを使っていません。別に嫌ってるわけではなく、今後、入手しづらくなると思われるので代わりのものを模索してみました。小さなシールドに入ったのはムラタのバリアブルインダクタ #A1313AN-0001GGH=P3。100MHzくらいの FCZコイルみたいに使えそうですが、2次側(巻数の多い方)のセンタータップがありません。その隣の小さいのが高周波トランスの MABA-009488-61HWCA。あと、送信アンプ部で2つ穴のフェライトリング(いわゆるメガネコア)を使った手巻き高周波トランスも使っています。改めて FCZコイルの便利さを実感した次第。
TRX-502基板の裏面。ツマミがついてるのはボリュームと周波数変更用のロータリーエンコーダ。