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昨年作った TRX-504で NFB付きベース変調というのをやってみましたが、波形が良好で歪感も無く、回路もそれほど複雑でないのでもう少しいじってみようと思い、TRX-505の変調回路をこの方式に置き換えたものを作ってみました。
変調部分、及び終段増幅です。PLL(Si5351A)の出力を 2SC3356x2のプッシュプルで軽く増幅・変調し、AFT05MS003Nで一気に 500mWまで引き上げます。2SC3356のプッシュプルは変調をかける都合上、レベルの低い部分で使う必要があるのでここではゲインは数dB程度しかとれません。一方、AFT05MS003Nは比較的新しい RF MOS FETなのでかなりゲインがとれます。正確なところはわからないのですが、この回路では 20dB以上とれているような気がします。
このプッシュプルのベース電圧はオペアンプ(AD8531)でドライブしますが、その出力レベルをコレクタに入れた抵抗(R16)で検出し、フィードバックをかけます。このループを音声信号で振ってやることで変調をかけます。フィードバックがあるのでベース変調に付きものの歪みはほぼ無くなります。
プッシュプルではなく、単体のトランジスタでも同じ方法で変調をかけられると思いますが、ベース電圧の低い部分、キャリア波形の上下の非対称が大きい領域で使うことになるので偶数次のスプリアスが大きくなると思われます。トランジスタ自体は安価ですし、手巻きでトランスを作るのは少々面倒ではありますが、回路としてはそれほど複雑になるわけでないのでプッシュプル構成にして綺麗な波を目指します。
今回は 2SC3356を使いましたが、たぶん 2SC1815など、もっとロースペックなものでも問題なく動くのではないかと思います。hfeは小さい方が制御しやすく、結果的に大きな出力が出せると思われます。上記回路の終段を取り除いた状態で 10mWくらい出れば、かのFCZポケトラ的なものになるかなと。
ところで、4W出力とれる AFT05MS004Nというのもありますが、なぜか MOUSERで「SOT-89」で検索しても出てこないので存在に気がつきませんでした。003Nで免許申請しちゃったので変更もできないし。
NFBが無い、つまり普通のベース変調時と、NFBをかけた時の比較。左が NFBが無い場合。VBE-IC特性の立ち上がりカーブの影響で正弦波の先端が尖った形に歪むことがわかります。「ベース変調は音が悪い」というのはこれを指すと思われます。右側は NFBによる補正が入ってるのでちゃんとした正弦波。
送信回路ブロック図。ブロック図だと部品は少ないみたいですが、なんだかんだでそれなりの部品数があります。免許変更申請済みで下りるのを待っている状態です。(注:申請受理されました。)
→送信基板 回路図(PDF)
→受信基板 回路図(PDF)
→MCU / 電源 / PLL基板回路図(PDF)
→操作パネル回路図(PDF)
受信基板の改良後の詳細はこちら→受信基板の改良・セラミックフィルタを入れる
BPFはこんな感じ。Qを上げた T型LPFの2段直列。最初のは Qを低めにしてインピーダンスマッチングを優先、後の方を Qを上げてフィルタリングしているつもり。これでなんとか2次高調波 -20dBm以下をクリアできたかな?
送信基板上にはこの回路図の左側の分しか載っていません。右側は受信基板に送受信切り替えの RF Switchとと共にあります。
RF Tools | LC Filters Design Toolの計算値。Passband Rippleを大きくした3次チェビシェフLPFなので 50MHzあたりに山ができる。
受信ブロック図。50MHzを RF AMPで増幅、Mixerで 10.7MHzに変換してあとは Si4735に任せています。Si4735の SSB Patchが使えるようになったので AMの他に SSBも受信可能になっています。また、中波用のバーアンテナを内蔵し、FM放送の他に AM放送も受信できます。Si4735は長波〜短波受信も可能なのですが、幅広い範囲をカバーするのはいろいろ面倒なので、この機で実用になるのは中波域のみ。
開発中の図。TRX-505の送信基板を今回の基板と置き換えて実験。この画像では終段回路はまだありません。
終段回路を追加した基板 01。放熱器は本来、ファイナルFETの裏面につけるべきなのでしょうが、基板の下には Li-Po電池があってつけられないので FETのそばに宙に浮いた状態で取り付けられてます。コイル類はトロイダルコア・ダストコアに手巻きしています。面倒ではありますが、いろいろ調整して実験ができるので。
上記波形時の変調波のスペクトル。信号と高調波の差が 30dBとれていて大変良好。ただし、現在は消費電力を抑える方向で調整したのでここまでは出ません。23〜25dBくらい?
高調波スプリアス。基準以内ですが2次高調波が少しあります。グラフはアッテネーターも含めて補正済みなので 0dB = 0dBm = 1mW。
試しに少し過変調にしてみました。ベース変調なので低い方はクリップします。
上記波形時のスペクトル。帯域が広がるとはこういうことなのですね。
内部基板。左上が受信とアンテナ切り替え回路部分。左下が送信回路。右側は制御部分と PLL、電源回路、Li-Po電池充電回路。。制御基板及び受信部基板は TRX-505とほぼ同じ。送信回路も変調部分のみの変更なので双子と言ってもいいですね。
ケース外観。こちらも TRX-505とほとんど同じですが、ロッドアンテナが違うのでその部分のみ変更してあります。全く同じだと区別がつかないので色はつや消しの黒に。
外部アンテナコネクタの保護カバー。閉じているとロッドアンテナが有効ですが、スライドさせて開くと外部アンテナコネクタが有効になります。
ボディ左側。上の穴はヘッドフォン端子で、下がマイクコネクタ。マイクは八重洲のΦ3.5mm 4Pタイプ互換の物を使います。このマイクはスピーカーマイクなのですが、このコネクタにはスピーカー出力は出ません。これは基板が受信部と送信部に分かれている為。いろいろ切り替えるのも面倒だったので。
ボディ右側。上から ISPプログラム・デバッグ用コネクタ、5V 2A入力の microUSBコネクタ、小さくて白い丸2つは充電インジケータLED、12V入力コネクタ。5V及び 12V入力は内部の Li-Po電池を充電するのに使います。
分解図。ボディ前面の一番左のネジ2つはダミーです。単なる飾り。あるいは、ネジを無くした時の予備とか。
送信部及び受信部基板のクローズアップ。手巻きのコイルが多いですね。受信部基板にジャンパー線が何本かありますが、意図的なもの。左側の寝ている電解コンデンサ2個の下にスピーカーアンプがあるんですが、この配置だとどうしても配線が送信回路のグランドを横切ってしまうのでそれを避けた為。
上ケースの裏面。スピーカーとロッドアンテナのマッチング回路があります。送信電波が基板に飛び込むのを防ぐ為、電磁波吸収シートを貼り付けたプラ板でシールドしてあります。マッチング回路は品川アンテナ(GAWANT)を参考にアレンジした回路。わたしは勝手に「KAWANT」と呼んでたり。
フロートバランを入れるとグランドの影響が最小限になるので周囲の状態次第で動作が不安定になることが無くなります。その代わり、高周波的にはグランドと切断された状態になるので微妙に感度が落ちる気がします。
以下の記事を参考にしています。感謝。
→JH4VAJ局の GAWANTもどき製作記事
→JR8DAG局の Imitation of GAWANT50A
ロッドアンテナの SWR特性。トリマーコンデンサ及びコイルのタップ切り替えで楽々 SWR1.2以下を狙えます。
下から見た図。基板の下側に 2000mAhの Li-Po電池が2個あります。消費電流は受信時は 100〜200mA程度、送信時は 300mAを少し上回るくらい。
制御基板の裏面の中波用バーアンテナとそのインダクタンスを測っているところ。aitendoで売ってたバーアンテナをほどいて使っています。Si4735の場合、200μHちょっとくらいの値にすると中波受信に具合がいいようです。インダクタンスが大きいと高い周波数が入りにくくなります。300μHくらいだと 1500kHz以上で同調時のキャパシタが最低限になって調整できなくなるようです。なお、データシートではバーアンテナは 180μH以上が指定されているのでそれ以上がいいでしょう。
1kHz変調波形。消費電力を抑える方向で調整をしたら波形のピークがちょっと丸まりましたが、音質的には支障ないレベルかと。
名称 | 50MHz AMトランシーバー TRX-505M |
周波数 | 受信:50.000.0MHz 〜 51.000.0MHz(AM/SSB) FM放送:76.0 〜 108.0MHz AM放送:150kHz 〜 30MHz(ただし、実用感度は中波域のみ) 送信:50.000.0MHz 〜 51.000.0MHz(AM) |
送信 | 出力:500mW / 8V 終段FET:AFT05MS003N x 1個 電波形式:AM(A3E) 変調方式:低電力変調(NFB付きベース変調) |
受信 | 受信方式:RFアンプ+シングルスーパーヘテロダイン+DSP 中間周波数:10.7MHz DSPチップ:Si4735 (AM及び SSB受信可能。SSB patch : PU2CLR SI4735 Library for Arduino) |
制御 | MCU : STM32L051K8T6 PLL : Si5351A |
電源 | 3.7V 2000mAh Li-Po電池2個内蔵 充電入力 12V 1A もしくは 5V 2A |
外形寸法・重量 | 150mm x 75mm x 35mm(突起物を除く) 重量:340g(内蔵 Li-Po電池を含む) |
受信回路に特別不満がある、というわけでもなかったのですが、いろいろ思いついてまた改良しました。
ミキサーICを SA612Aから NJM2288に変えてみました。今回の用途では特別性能差があるというわけではないと思いますが、SA612Aは 5Vが必要なのに対して NJM2288は 2V程度から動作する利点があります。Si4735もその程度で動きますので、RFアンプも含めて 3.3Vで動かすようにしてみました。
それから今回は 10.7Mzの FM用セラミックフィルタを入れてみました。FM用で帯域幅が 300kHzくらいあるのでどうかとも思いましたが、そのくらいであっても 50MHz AM帯の受信の場合は SSBや FT8等の強力な信号を減衰させることができます。Si4735自体で選択度は確保できていますが、近接の強い信号が入ってしまうと Si4735の LNAの AGCが効いてしまって目的の信号の感度も落ちてしまいます。フィルタがあるとそれが防げます。とは言っても強力過ぎて RFアンプやミキサーが飽和してしまうと混変調が起きてしまいますが。
あと、細かいですが I2Cのノイズを防ぐため、DACの部品配置を変え、I2Cラインに抵抗を入れて引き回しを最小限にしました。AM放送受信時の I2Cノイズがほとんど気にならなくなりました。なにせボリューム制御や液晶表示などにも I2Cを使っているので、ボリュームツマミを動かしたり液晶表示が変わる度にポツポツノイズが入っていたので。
→受信基板回路図(PDF)
TRX-505M自体で測定してみた図。13MHzあたりに跳ね返りがありますが、このくらいなら Si4735で十分に取り除けるので問題ないです。
↑後で抵抗追加してみようかと。
インピーダンスマッチングをとるためにセラミックフィルタの出力側に 470Ωを追加。入力側は元々 NJM2288の出力抵抗を 330Ωにしていたのでそのまま。跳ね返りは多少緩和されたかも。
もうちょっと帯域幅が狭いといいんだけどなあ。
なお、以前の基板での特性はこんな感じ。「IFT」はトロイダルコア(ダストコア)に手巻きの自作。ほとんど選択度がありません。DSP Radioチップの性能に依存してた状態。
部品箱にいつどこで入手したのか定かでないクリスタルフィルタがありました。KDK 10M15Aとあり、どうやら FM用の 10.7MHz・帯域幅 15kHz、インピーダンス 3kΩのもののようです。うちの受信部の場合、DSP Radioチップ自体で帯域幅を 1k〜6kHz(SSBモード時は 0.5kHz〜)に絞れるのでこのくらいの方がむしろ丁度いい。交換してみました。
今度はインピーダンスがちょっと高くなるので NJM2288の出力は抵抗負荷ではなく、RFCとしてみました。5943000101(アミドン FT23-43相当)に 0.2mmUEWを 16回巻いたら 46μHくらいになり、10.7MHzで 3kΩ前後かなと。
→受信基板回路図(PDF)
こんな感じで帯域がぐっと狭くなり、とても良好です。ただ、インピーダンスが低くなっているらしく、中心周波数が少し下がっています。それに合わせて IF周波数の方を変更。10.695MHzとしました。これでいい具合かな。
ついでに受信感度の周波数特性。なんか 56MHzに小さな山がありますね。まあ、支障ないでしょうが。