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昨年、TRX-503シリーズを作ってある程度技術力が上がったので、もう少し送信出力が大きく、ロッドアンテナ内蔵でカジュアルに移動運用できるような物を作ってみました。
本体正面。今回は白色のアクリル板を使ってみました。57mmの(比較的)大型スピーカー搭載。また、液晶パネルとロータリーエンコーダ、各種操作用ボタンあり。マイクは普通に外部マイク方式。ロッドアンテナは約80cmですが、50MHzにチューニングされていて伸ばせばそのまま送信できます。今回も FM放送の受信回路がついているのでその時にも使えます。
本体サイズはおおよそ 150mm x 90mm x 40mm。 約350g。3.7V 2000mAhリチウムイオン電池2本内蔵で、消費電流は受信時は 100〜200mA程度(スピーカーボリュームによる)、送信時はおおよそ 400mA前後。
外部アンテナコネクタ。スライド式のカバーがついてます。マイクロスイッチを仕込んであり、カバーを開けると外部コネクタに、閉めると内蔵ロッドアンテナに切り替わるようになっています。直接マイクロスイッチに RFを流すわけではなく、RF Swithを使うことで切り替えロスも最小。
マイクは昨年のハムフェアで八重洲のハンディ機用のマイクの互換品を買ったのでそれを使います。
本体右側面。12Vの ACアダプタで内蔵のリチウムイオン電池(2本)の充電ができるようになっています。また、microUSBコネクタもあります。こちらは 5V 2Aで充電が可能。
内部基板。MCU / 電源 / PLL基板の上に操作パネル基板が載っています。その横、上半分が受信部、下半分が送信部の基板です。前回は基板1枚で全回路を載せていたので、回路変更がある度に全部作り直しでしたが、今回は多少緩和されたかなと。
MCU / 電源 / PLL基板。リチウムイオン電池の充電回路も含んでいます。電池 2000mAhの物が2個、基板の下にあります。
基板下のリチウムイオン電池とアンテナの切り替え用のマイクロスイッチ。
送信基板・受信基板の最終形態。トロイダルのフェイライトコア・ダストコアを積極的に使っていますが、一部、表面実装のチップコイルも使っています。
放熱器の下にファイナルの FETがあります。放熱器はスペーサー代わりの六角ナットを間に基板から浮いた状態になっているので、その下にも部品があります。
受信回路が発振するのでコイルにシールドを追加。また、オーディオ回路のコンデンサをセラミックからオーディオ用電解コンデンサに変更したり。
名称 | 50MHz AMトランシーバー TRX-505 |
周波数 | 受信:50.000.0MHz 〜 51.000.0MHz(AM/SSB) FM放送:76.0 〜 108.0MHz AM放送:150kHz 〜 30MHz(ただし、実用感度は中波域のみ) 送信:50.000.0MHz 〜 51.000.0MHz(AM) |
送信 | 出力:500mW / 8V 終段FET:AFT05MS003N x 1個 電波形式:AM(A3E) 変調方式:低電力変調(平衡変調) |
受信 | 受信方式:RFアンプ+シングルスーパーヘテロダイン+DSP 中間周波数:10.7MHz DSPチップ:Si4735 (AM及び SSB受信可能。SSB patch : PU2CLR SI4735 Library for Arduino) |
制御 | MCU : STM32L051K8T6 PLL : Si5351A |
電源 | 3.7V 2000mAh Li-Po電池2個内蔵 充電入力 12V 1A もしくは 5V 2A |
外形寸法・重量 | 150mm x 75mm x 35mm(突起物を除く) 重量:370g(内蔵 Li-Po電池を含む) |
前回同様、手ハンダ可能な表面実装部品を積極的に使い、自分なりに小型・高性能を目指しています。基本構成などは前回をほぼ踏襲しています。
回路図は随時更新されると思います。
→受信基板回路図(PDF)
→送信基板回路図(PDF)
→MCU / 電源 / PLL基板回路図(PDF)
→操作パネル回路図(PDF)
受信回路ブロック図。前回同様、RF AMP + Mixerで DSPラジオチップが受信できる周波数に変換、以降は DSPラジオチップでデジタル処理してアンプを駆動します。IF周波数は今回は 10.7MHzにしてあります。SSB受信用の BFO回路がありますが、Si4735自身で SSB受信できるパッチがあるので、後ほどそれで受信できるようにする予定です。
やはり前回同様、RF AMPのゲインを MCUでコントロールできるようしてあり、DSPラジオチップの RSSI値でコントロールする「ソフトウェア AGC」を実現しています。またこれはハムフェア会場のような超ローカルQSO時にも受信ゲインを大幅に落として対応できるようになっています。
追記。SSBパッチを使えるようにしたので、現在は SSB受信にはこのプロック図の BFOは使用していません。また、中波受信用にバーアンテナを内蔵しています。
送信回路ブロック図。変調回路までは基本的に前回と同じですが、RF MOS FETの2段増幅だけで 500mWを出しています。初段の 2SK3475はそれ単体で 630mW出せる能力がありますが、軽く使って終段の AFT05MS003Nをドライブします。AFT05MS003Nは 7.5Vで 520MHz 3Wを出せるので、今回の出力(AM 0.5Wなので、ピーク値は 2W)にはちょうどよいかと。MOUSERで 222円(2020/03/29現在)で売ってます。2SK3475の方が高い。
2020.4.6 追記。2SK3475は樫木総業でも売ってますね。こっちの方が安い。
マイクアンプ・変調回路は前回と同じ NJM2783・NJM2594を使っています。NJM2783は秋月でも扱うようになりました。
変調回路を NFB付きのベース変調に変えたバージョンも製作しました。→TRX-505M / NFB付きベース変調を用いた 6mAM 自作機
1kHz変調時のスペクトラム。グラフはアッテネーターも含めて補正してあり、1mWが 0dB、つまりそのまま 0dBmになっています。今回はマイクアンプの後にオペアンプの LPFを入れて積極的に 3kHz以上をカットしてあります。
高調波スプリアスを確認。2次高調波は少し出てますが、3次はわずか、それ以上はほとんど観測レベル以下。測定に使っている RTLSDR Scannerは誤差が大きい可能性もありますが、これくらい小さいなら問題ないでしょう。ちなみに 50MHzではスプリアス領域はこのグラフは -13dBm以下である必要があります。
内蔵アンテナは手持ちのジャンク品から長さの適当な物を使ってるので 1.5mあるわけではなく、80cm程度しかありません。これを使うため、以前作った TRX-503用のホイップアンテナと同様のコイルを入れたのですが、周囲の影響、特にグランドの状態で同調周波数・SWRが激しく変動し、動作が不安定でした。
また、当初はこのマッチング回路を基板上に搭載していたので、送信すると回路に電波が飛び込んで回り込み、発振したりもしていました。
そこで基板上からマッチング回路を排除し、コネクタだけにして上ケースの方にマッチング回路を置くことにしました。この回路とアンテナの根本部分は電磁波吸収シートやそれを貼り付けたプラ板で覆い、発振防止にしました。
マッチング回路は JH4VAJ局の GAWANTもどき製作記事と JR8DAG局の Imitation of GAWANT50Aを参考に、アレンジを加えて作ってみました。マッチングコイルの1次・2次のグランド側を接続するのであれば、途中のタップから給電する方が簡単そうだと。効率も良くなりそうだし。
それでもグランドの変化の影響はできるだけ排除したいと思ったのでフロートバランを入れてみました。これが結構効いて動作がだいぶ安定しました。全く影響がないわけではありませんが、同調周波数・SWRがあまり動かないので調整もやりやすいです。トリマーコンデンサで微調整が効きますし。
調整したら 50.6MHzで SWR 1.1程度になりました。
補足。調整は最初、同調周波数をトリマーコンデンサでおおまかに合わせます。それからタップを切り替えて一番 SWRが低くなる所に固定します。タップを変更すると同調周波数が少しずれるので、再度トリマーコンデンサで微調整します。タップの位置はロッドアンテナの長さで違ってくると思います。NanoVNAやアンテナアナライザーがあると楽勝で SWR 1.1程度を狙えます。
コイルのタップはコイルを巻いた後、ヤスリかカッターで軽く被覆に傷をつけ、ハンダゴテでハンダをつけると同時に被覆を溶かしておきます。
T-37-10では小さすぎて作りにくい、あるいはうちみたいな QRPじゃない場合は T-50-10等、大きいトロイダルコアで作ってもいいと思います。同調周波数が外れたら巻数やコンデンサーを適当に調整してください。
フロートバランのコアはうちは 5943000201を使っていますが、FT-37-43 / FT-50-43や TR-10-5-5EDでもいいと思います。巻数もアバウト。多ければグランドの影響が少なくなり、ひょっとするとコモンモードノイズも防げるのかもしれませんが、損失も増えそうなのでうちは5回にしてます。これも適当に調整してください。
もう1セット作って昨年作ったポータブルアンテナの中身をこれに変えてみました。 このアンテナのロッドアンテナは約50cmと TRX-505の内蔵アンテナより短いのでタップ位置は3回目になっています。
反対側。トリマコンデンサは 20pF、それに 10pF C0Gのセラミックコンデンサを使っています。この後、振動対策としてホットボンドで固めています。
サクッと SWRが下がるので気持ちがいいです。ただ、グランドの影響がない反面、その分、感度が微妙に下がった感じがします。安定動作との引き換え?